研究課題
PTGS(Post-transcriptional gene silencing)は植物においてウイルスに対する防御機構として働いていることが明らかになりつつある。しかしPTGSが植物ウイルスの病原性発現に関与する分子機構については未解明の部分が多い。そこで本研究では、非常に多様な病原性と宿主範囲を持つポテックスウイルス属に着目した。病原性の異なるポテックスウイルスの系統を蒐集したうえで、ゲノムにおける病原性決定因子を特定し、病原性の発現における宿主因子との相互作用の機構を解明し、さらにその病原性の発現にPTGSが関与する分子機構を解明することを目的としている。まずさまざまな病原性を示すポテックスウイルスの複数の系統の網羅的解析を目的として、ポテックスウイルス属のタイプ種であるジャガイモXウイルスの本邦産5系統(PVX-OS,-BS,-BH,-OG,-TO)を蒐集し、そのタバコにおける病原性を解析した。5系統はタバコにおいてそれぞれ、植物の壊死が関わると考えられる輪状斑(PVX-OS)、PTGSが関与していると考えられるモザイク(PVX-BH)、無病徴(PVX-BS,-OG,-TO)という明確に異なった病徴をあらわすことがわかった。またこれら5系統のPVXよりウイルスRNAを抽出、cDNAを合成し、シークエンスによって全塩基配列を決定した。その結果、これら5系統は互いに非常に高い相同性を持ち、既に報告されているPVXのうち、南米系統に比べてヨーロッパ系統と、より相同性が高いことがあきらかとなった。以上の結果を、論文としてまとめ発表した。5系統間の高い塩基配列の相同性にも関わらず、前述のように非常に異なった病徴を発現することより、このPVX-タバコの系は病原性決定におけるPTGSの分子機構を解析していく上で非常に有用なモデル系であると考えられた。
すべて 2005
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Virus Genes (in Press)