本研究は平成16年度より3年間にわたる研究計画の下で、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、ヒトの音声言語生成のメカニズムについて、末梢・中枢の両面から明らかにすることを目的として行っている。具体的には、口唇・舌・歯・軟および硬口蓋といった調音器官が音声言語生成に際してどのような役割を担っているか、MRI動画記録法及び機能的MRIを用いて、その時間的・空間的変化を分析・解明することで明らかにしようとするものである。 平成17年度は、MRI動画記録法を用いて、特に口唇口蓋裂患者の調音運動時の口唇・舌・軟口蓋における時間的・空間的変化の抽出および二次元、三次元評価を行い、発音機能について末梢評価及び臨床診断への応用を試みた。さらにUniv.of Illinois Biomedical Imaging Centerにて、MRI動画記録法のシークエンスの改良および新しい画像構築法の確立を試みた。具体的には従来使用していた心臓cineシークエンスから、マルチデータ収集法あるいはspiral法といった新しい画像撮像法にて撮像を行い、画像の比較検討を行った。繰り返し撮像の軽減すなわち撮像時間を短縮することで患者への負担を軽減し、臨床へのさらなる応用を図ろうと試みている。 また、機能的MRI(functional MRI)を用いて、構音器官である口唇、軟口蓋あるいは歯列弓にcleftを有する口唇口蓋裂患者の発音機能を通して、調音器官が音声言語生成に対して与える影響について中枢評価を行っている。すなわち口唇口蓋裂患者の発話と脳機能との関係を明らかにすることで、調音器官が音声言語生成に際してどのような影響をおよぼしているか解明している。 さらに現在、Univ.of Maryland Vocal Visualization Labにて発話時の舌運動の3次元的計測法の確立を行っている。将来的にはこの計測法により口唇口蓋裂患者の特殊な口腔環境における舌運動の3次元的評価に応用できるものと考えている。 以上述べた内容のうち、既にいくつかの成果は学会発表および論文発表を行った。
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