イオンチャネル型のATP受容体P2Xは、時間依存的にイオン選択性が変化することや、記録ごとにうち向き整流性の強度がばらつくなどの特徴あるポアの性質を持つことが知られている。我々は、アフリカツメガエル卵母細胞にP2X2を発現させ2本刺し膜電位固定下でATP投与後の電流を記録した結果、内向き整流性のばらつきが発現密度に相関することを見いだした。これを手がかりとして、受容体の種々の性質を発現レベルとの関連において解析し以下の知見が得られた。 (1)P_<K+/PNa+>の発現密度に依存した変化は観察されなかったが、P_<NMDG+/PNa+>は発現密度と負の相関を示した。(2)内向き整流性の強弱は発現密度と負の相関を示した。脱分極パルス直後に観察される外向き電流(I_<initial>)は、経時的に減衰し定常レベルに(I_<steady>)に達した。I_<initial>およびI_<steady>の、内向き電流の大きさに対する割合はどちらもチャネルを高発現にすることによって増加した。(3)高濃度のATP(100μM)により弱い内向き整流性電流を呈する発現密度の高い細胞に、低濃度ATP(3μM)を投与するとその内向き整流性は増強した。(4)[ATP]-応答関係のKdの値は発現密度と負の相関を示した。Hill係数は発現密度に相関なく一定値2であった。(5)ポア上部の点変異I328Cにより上記の発現密度に依存したポアの性質の変化がほぼ消失した。 以上の結果から「膜上に存在する「開状態」のチャネルの密度に依存してP2X_2受容体はそのポア上部においてなんらかの構造変化を引き起こし、ポアの性質やリガンド感受性が変わる。」という結論に至った。
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