イオンチャネル型のATP受容体P2Xは、時間依存的にイオン選択性が変化することや、記録ごとにうち向き整流性の強度がばらつくなどの特徴あるポアの性質を持つことが知られている。本研究課題において昨年度我々は、P2X2受容体の膜上発現密度とチャネルの性質の相関を解析し、「膜上に存在する「開状態」のチャネルの密度に依存してP2X2受容体はポアの性質やリガンド感受性が変わる。」という結果を得た(Journal of Physiology(2004))。上述したチャネルの膜上発現密度は、細胞膜上のチャネルタンパク量と膜リン脂質量のバランスと言い換えることが出来る。本年度はこの点に着目し細胞膜リン脂質量とチャネルの性質の相関を電気生理学的手法、薬理学的手法及び、タンパク質生化学的手法を用いて解析した。実験結果より「開状態のP2X2受容体の細胞内領域膜近傍に細胞膜リン脂質が静電気的に直接結合することにより開状態の安定を引き起こす。リン脂質とP2X2受容体の結合が減弱しポアの安定性が失われた際にイオン選択性が変化し、その後P2X2受容体は脱感作する。」という結論を導いた。細胞膜リン脂質が直接チャネルのゲート開閉に関わるという知見は新しいものである(現在投稿中)。このリン脂質による修飾が発現密度によるポアの性質の修飾機構に直接的に何らかの関わりを持つ可能性があると考えて、現在さらなる統合的な解析を遂行中である。
|