研究課題
ParpのDSB修復への関与を検討するため、2006年4月よりDSB修復研究の権威である英国サセックス大学Prof.Penny Jeggo研究室において研究を行った。Jeggo研究室では、DSB切断後にリン酸化され細胞内でフォーカスを形成するH2AXをDSBのマーカーとして用いている。放射線照射後にリン酸化H2AX(γ-H2AX)の抗体を用い免疫蛍光染色した後、γ-H2AX fociを計測することによりDSBの絶対数を評価する。Parpファミリーの中でもParp-1及びParp-2がDNA切断端に結合し活性化されることが知られているため、本研究では双方の活性を阻害するParp阻害剤を用いてNHEJへの関与を検討した。放射線照射後のDSBは、G1期においてNHEJのみで修復されることが知られているため、G1期に同調後、放射線照射後のγ-H2AX fociを計測した。DNA-PK、Ku80及びDNA ligaseIV欠損細胞では顕著なγ-H2AX fociの消失遅延が認められたが、野生型細胞に対するParp阻害剤の添加ではγ-H2AX fociの消失遅延は認められなかった。DNA-PK、Ku80及びDNAligaselV欠損細胞にParp阻害剤を添加したところ、Ku80欠損細胞においてのみ放射線照射後のγ-H2AX fociの消失が全く認められなかった。NHEJに関与することが近年発見されたXLFの欠損細胞に対してParp阻害剤の効果を検討した。XLF欠損細胞はγ-H2AX fociの消失遅延を示すが、Parp阻害剤の添加はさらなる遅延を示した。以上の結果から、Parp阻害剤はKu80及びXLF欠損下におけるDSB修復を抑制したため、DSB後のParpの活性化はKu80及びXLF欠損下でのNHEJのバックアップ経路を促進している可能性が考えられた。
すべて 2007
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Nova Science Publishers, Inc. 6
ページ: 133-147