「占領期雑誌記事情報データベース」(http://www.prangedb.jp/)、国立国会図書館東京本館憲政資料室所蔵のマイクロフィッシュを活用することで、プランゲ文庫コレクションにおける娼婦表象に関わる文学作品、論文等の調査・分析を行った。この調査により、次のような研究成果が得られた。 1 これまで一般的に知られてきた戦後の「解放」感を象徴するような娼婦表象以外に、それとは全く異なる特徴的な表現が、複数の作品、作家に共通性して見られることを、主に通俗雑誌に掲載された記事・文学作品の分析から具体的に明らかにし、考察した。(なかでも、「敗者」「被占領者」を癒す聖性を帯びた娼婦など、マリア的な娼婦が多く書かれたことについて、そのことが「敗戦」「占領」の記憶、心理といかに関連しているのか明らかにしたものを、論文発表準備中である。) 2 中国大陸から引き揚げた「芸者」「娼婦」を主人公とし、戦時期・敗戦直後の「大陸」の「記憶」を扱った作品を調査・分析し、戦後における「大陸」「戦争」表象について考察した。 以上に加えて、女性表象分析の一貫として、菊池寛の戯曲および女性雑誌(『主婦之友』)の分析を行い、娼婦的な女性として描かれることの多い「女優」表象について、日本近代演劇史研究会1月例会にて口頭発表(発表題目:「菊池寛「或る女性三部合奏」--<女優>表象と<メディア>の問題を中心に」、日時:平成17年1月21日、場所:明治大学)を行った。
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