研究概要 |
本年度は、格子量子色力学における基本的なパラメーターの1つである結合定数の決定に関する研究を行った。特に、結合定数の非摂動的なエネルギー発展を記述するステップスケーリング関数を格子上で計算した。この数値シミュレーションには超並列計算機(CP-PACS,筑波大学計算科学研究センター)を用いた。このときに用いたくりこみ処方は、有限サイズ法に基づいたシュレディンガー処方である。この利点は、格子状の計算において、格子化による離散化誤差を少なくすることや、大きなエネルギースケール間の結合定数の発展を高精度で調べることが可能なことである。結合定数が強結合、弱結合の両方の領域について調べた。岩崎作用というくりこみ群解析により改良されたゲージ作用を用いた。さらに摂動的に改良されたルシアーワイツ作用についても数値シミュレーションを行った。離散化誤差を少なくするために摂動的な改良も様々な形で行った。例えば、摂動計算ですでに分かっている離散化誤差を数値データ解析の際に除去するなどの改良を行った。その結果、統計誤差0.3〜1%の範囲内で連続値を得ることができた。その値は既存の別のゲージ作用を用いて計算された値と誤差の範囲内で一致していることを確認した。さらに、物理的なエネルギースケールを決めるための数値シミュレーションも行った。スケールの決定にはゾンマースケールという重クオーク対間のポテンシャルから定義される量を用いた。この場合にも各種の改良を行った。そして、その結果連続値を2%の精度で決定することができた。
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