研究課題
サッケードは、正確に視覚目標をとらえる急速眼球運動で、この正確さは、病気や老化などで一時的に失われても、修復機構が働き回復する。この機構は、サッケード適応と呼ばれ、随意運動学習のモデルとして注目されてきた。昨年度、サッケード適応を繰り返し行うと適応効率が上昇すること、この適応促通は先行する適応の範囲内のみで誘発されることを発見し、適応中に学習痕跡が形成されている可能性を示した。さらに、この学習痕跡はエラーゼロのサッケードを繰り返し行うことにより消去されることも示した。今年度はこの結果をまとめ国内外の学会に発表するとともに、論文に投稿した。今年度は、この適応効率の上昇のメカニズムを明らかにするための2つの実験・解析を行った。まず1つ目は、上記の実験によるサッケードの特性(持続時間と速度)を解析した。適応促通を引き起こす痕跡の存在下と消去された後ではサッケードの特性に違いがあることを示した。痕跡存在下ではサッケードの速度は速くなったが、痕跡が消去された後は、速度はもとに戻った。この結果は、エラーゼロのサッケードを繰り返し行うことにより痕跡が消去され、サッケード系をリセットすることをさらに強く示唆する。2つ目は、水平のサッケードを適応させた後に、斜めのサッケードを適応させる実験を行った。水平成分と垂直成分に分けて解析したところ、水平成分が優位に促通されていた。垂直のサッケードを適応させた後に、斜めのサッケードを適応させる実験を行うと、垂直成分が優位に促通されていた。これにより適応促通を引き起こす可塑的変化が、サッケードの運動指令をコードする部位で起きていることが示唆された。現在は、電気生理学的手法を併せて研究を進めている。
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