研究概要 |
エゾシカをはじめ多くの有蹄類にとって、狩猟は最も重要な死因であるといわれている。しかし、狩猟における死亡パターンの評価は非常に少なく、個体群動態への影響を評価するための基礎的情報が乏しい状況である。北欧において、ハンターが特定の齢のシカをより好んで撃っているという報告がある。より好みとはすなわち死亡パターンを意味するため、シカの個体数変動を考える上で重要な情報である。しかし、比較的急峻な地形でかつ、狩猟スタイルの違う日本において、実際にシカを選択的に捕獲しているのかは不明である。そのため、エゾシカ猟におけるハンターのより好みを定量的に評価した。 調査対象は、北海道東部足寄町で1990-2002年度に捕獲された約3万頭のシカである。有害駆除で得られた約1.5万頭の齢を査定し、その齢構成に基づいて、各年度の齢構成表を性別に作成した。上記の捕獲データから、コホート分析によって、1990-1995年度の生息数を復元した(最終齢は7歳に設定した)。1990-1995年度を対象年とし、各年度の捕獲圧(捕獲数/生息数)、齢別死亡率(齢別捕獲数/齢別生息数)を算出し、ハンターのより好みを評価した。 オス・メスとも、全ての年度において、ハンターのより好みが存在した。0歳はほとんど捕獲されておらず、0歳を除く全ての齢の捕獲数には、より多く捕る方向へバイアスがかかっていた。また、オスにおいて、5,6歳の死亡率は他の齢に比べて高い傾向が示された。 北欧では、捕獲圧が上がるほど、ハンターは自分の好みとするシカがいなくなり、何でも獲ってしまうので、より好みが減少すると報告されていたが、本研究では特に認められなかった。捕獲圧が北欧に比べて低いため、対象期間中、常にシカを選択的に捕獲できたのではないかと考えられる。
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