本年度は以下について研究を行った。 ハイテク・ベンチャーについて、その主な事業体である大学発ベンチャー企業の事業主に対して、起業の経緯とその実態について、前任度よりさらに精度を高めたインタビュー調査を行った。その結果、設立後すでに数年が過ぎているが、未だ製品化には至っていないケースはやはり少なくなく、当初の事業プランと現実とはかなり乖離していると指摘しうる状況であることが確認できた。 また、ハイテク・ベンチャーの事業の源泉である知的財産権の扱いについてさらなる整理を行った。論文「ライセンス・ビジネスとアライアンス」では、企業間アライアンスという大きな枠組みの中で、特許権等のライセンスを「ライセンス・ビジネス」の視点から捉え直した。アライアンスも含めた会社の内外の代替的な経営的選択肢の中にライセンスの各種形態はあり、供与した技術の管理について万全を図るためにライセンシーを特許のみならず資本関係で縛る選択も迫られる場合もある。超過利益分の源泉となる市場での優位性は特許だけで維持できるものではなく、その会社が培ってきたユニークな能力に加えて不確実性下における会社側の不断の積極的投資にも由来することが明らかになったのである。これは、ハイテク・ベンチャーのみならず、一般企業にも応用可能な議論である。 これらの研究は、ハイテク・ベンチャーの起業には、本人の意欲のみならず様々な外部環境要因とその後の戦略が効いてことを示唆しているのである。
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