研究概要 |
微細構造を制御した高品質・高機能製品や,分子間構造変化を利用した環境応答性デバイスの開発のためには局所的かつ動的な熱制御,さらには物性制御技術の開発が期待される.本研究は,マイクロ領域における熱特性の非接触で高速なリアルタイムモニタリング技術の確立を目標としている.以下に本年度の研究成果を示す. 1.高速赤外線検出器を用いたダブルフィードバック機構を有する安定化加熱用レーザーパルスシステムの構築を行った.その結果,±2%以内での強度安定性を達成した.これにより,試料に対する安定した温度情報の書き込みを可能とした. 2.高速A/D変換ボードを用いたリアルタイム信号取得システムを構築した.本システムによって,加熱パルス発生と完全に同期した信号集録が可能となり,100data/sでの安定したリアルタイム熱物性計測を実現した. 3.リアルタイムセンシング時に発生が予想される,干渉性散乱光を含んだ回折信号光について,信号成分と散乱成分の分離解析評価を,ノイズを付加したケースも含めて総合的に行った.その結果,干渉性散乱が含まれる場合においてもノイズがある閾値以下ならば分離が十分に可能なことが明らかとなり,リアルタイム計測への本手法の適用可能性を理論的に示すことができた. 4.上記計測システムを用いて,温度応答性高分子poly(N-isopropylacrylamide)ゲルの構造変化過程のリアルタイムセンシングを行った.その結果,転移温度において温度伝導率の急峻な変化が計測され,また昇温/降温過程でその変化は可逆であることが明らかとなった.
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