1.LIT1 RNA刷り込み遺伝子の機能解析 我々は分子生物学的手法および免疫組織学的手法を用いて、ヒト11p15.5領域に位置する刷り込み遺伝子LIT1が(1)RNAとして機能する。(non-coding RNAである。)(2)周辺遺伝子の発現状態に影響を及ぼすインプリントセンターとして働く。(3)細胞周期を通して安定にLIT遺伝子周辺に蓄積することなどを明らかにした。また、Fiber RNA-FISH法を考案し、LIT1 RNAのクロマチン上への集積を観察した。さらに、クロマチン上のLIT1 RNAシグナルに周辺領域のDNA-FISHを重ねることで、LIT1 RNA分子が集積しているクロマチン部位の同定を試みた。しかし、残念ながらこれまでに部位の同定には至っていない。 そこで、我々はin situ hybridization法とChIP法を組み合わせた新しい手法を考案し、LIT1およびnon-coding RNAであるXistについてRNA分子が集積するクロマチン領域の解析を試みている。 また、Fiber RNA-FISH法を応用することで、non-coding RNAとしての働きが示唆されているヒト15番染色体上の刷り込み遺伝子UBE3A-ATSについても、LIT1同様にクロマチン上への集積を観察している。 2.核マトリックスとゲノムDNAの特異的結合機構の解析 本研究では、刷り込み遺伝子クラスター内のMARターゲティングによりクロマチンループ構造の変化がおよぼす遺伝子発現動態の解析を行っている。我々は、刷り込み遺伝子LIT1周辺に存在する2つのMAR候補領域を排除するため、薬剤遺伝子で置換した2種類のターゲティングベクターを構築した。現在は、ヒト11番父方染色体を保持するDT40細胞へ遺伝子導入を行い、改変染色体を作成中である。
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