研究課題
本年度は計画の初年度にあたり、各研究者が綿密な討議と予察を経て、それぞれのテーマに沿った調査研究を行なった。これを具体的に述べるならば、代表者の荒木は、地元研究者との折衝や情報交換に努めるとともに、メキシコ近郊における民衆宗教の聖地の重点的調査を行ない、現地における研究の現状をふまえて、基礎的文献・資料の収集を行なった。池上および中川は、共同でロスアンゼルスにおけるペンテコステ・カリスマ系に属する10余のキリスト教会の実態調査を行ない、その歴史的系統を整理し、「神癒」の実践や理論的特徴を分類しうる聞き取り、資料の収集を行なった。綾部は米国東部のペンシルベニア・ダッチとよばれる人々、および南西部のモルモン教徒の宗教変化を調査し、いずれの宗派においても新しい宗教運動の展開を確認した。黒田はメキシコ、オアハカ州におけるSDA教会の集約的調査などを通して、カトリック文化と新興セクタとの対立のみならず、共棲・住み分けの実態を解明した。同時に若者の脱キリスト教化、固有文化への回帰とアニミズムの復興を示す事例を収集した。中野はロスアンゼルスとメキシコ市における創価学会員に対してアンケート調査を実施し、彼らの信仰意識・世界観の解明を試みるとともに、メキシコの民衆宗教運動の聖地に関する予察を行なった。山中はテネシー州における合同メソジスト、ペンテコステ派の調査を行い、新たな資料を収集した。在米のLong,Carrascoは、日本人研究者に情報提供の便宜を図るとともに、各々のフィールドにおいて調査、文献収集を行なった。当初に立てた今年度の計画はほぼ達成されたと考えるが、反省点としては、いずれも調査期間が短いため、教団関係者や中心的リーダー、教団公認の教義書などに、情報源が片寄り、一般の信者や住民への調査が十分にできなかった点があげられる。これらは来年度の課題としたい。
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