アラブ首長国連邦ジュルファル遺跡の発掘

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05041008
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 佐々木 達夫 金沢大学, 文学部, 教授 (60111754)
• 研究分担者: ブハード ホクト ドイツ考古学研究所, 研究員 ; 金子 浩昌 早稲田大学, 教育学部, 講師 ; 二宮 修治 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (30107718)
• キーワード: 中世港湾都市 / 陶磁器 / 東西文化交流史 / アラビア半島 / インド洋貿易

研究概要

1994年11月、アラブ首長国連邦ランセルカイマ首長国にある、中世港湾都市ジュルファル遺跡を調査し、これまでに出土した陶磁器の整理も現地で行った。調査の目的は、中世のインド洋貿易で運ばれた陶磁器を使って、当時の貿易状態の一面を探り、それを使用した人々の生活と歴史を復元することである。陶磁器からみる東西文化交流史の研究である。すでにジュルファル遺跡は14世紀から16世紀にかけての港湾都市遺跡であることが、以前の調査で判明している。出土した陶磁器は、イラン、アラビア半島、東南アジア、中国などから運ばれたもので、当時の貿易の様相を知る手掛かりを与える。出土品の組み合わせと産地分類、実測図作成、写真撮影を行った。出土品の量は多く、まだその一部を整理したに過ぎない。来年度に整理を終了する予定である。
ジュルファル遺跡の発掘と同時に、周辺遺跡の踏査も短時間だが実施した。ジュルファル遺跡の北10kmに位置するハレイラ島の調査が主である。砂丘上でアツバス朝の遺跡、島の南端の小さな丘で15-17世紀の貝塚、島南端の東部の低い平坦部でササン朝の遺跡を発見した。ジュルファル遺跡の歴史的位置づけを行ううえで、重要な発見である。
周辺国の調査では、オマーンのアルバリッド、カルハットの両遺跡を短期間で踏査し、少量の遺物を採集した。ともに14世紀から16世紀にかけての港湾都市遺跡で、ジュルファル遺跡と同じ性質をもっている。比較研究は今後の課題である。

研究成果

• [文献書誌] 佐々木達夫: "アラビア湾のイスラーム港湾都市ジュルファル遺跡1993年度発掘" 『平成5年度西アジア史研究のデータベース化に関する総合的研究』(単行本) クバプロ. 41-49 (1994)
• [文献書誌] 佐々木達夫: "湾岸出土の陶磁器とその背景" インド考古 研究. 16. 44-46 (1994)
• [文献書誌] 佐々木達夫: "海の道" 『アジアの古代文明を探る』(単行本)クバプロ. 38-39 (1994)
• [文献書誌] SASAKI et al.: "Technical Studies on the Ceramics Excavated from Julfar in Ras Alkhaimah" Bulletin of Archaeology,The Universlty of Kanazawa. 21. 107-125 (1994)
• [文献書誌] Sasaki et al.: "Technical Studies on the White-glazed shards Excavated from A'Ali in Bahrain" Bulletin of Archaeology,The University of Kanazawa. 21. 126-136 (1994)
• [文献書誌] Sasaki: "1993 Excavations at Julfar" Bulletin of Archaeology,The University fo Kanazawa. 21. 1-106 (1994)
• [文献書誌] Sasaki et al.: "Lead isotope Ratios of the White glazes of the Sherds Excavated at A'Ali,an Archaeological site in Bahrain" Proceedings of the Japan Academy(70,series B). 70. 1-3 (1994)
• [文献書誌] 佐々木達夫: "インド洋の中世陶磁貿易が語る生活" 上智アジア学. 11. 87-117 (1993)
• [文献書誌] 佐々木達夫: "イスラームの自釉は錫釉か" 陶説. 488. 15-19 (1993)