研究課題
従来蓄積してきた中国西南部の音楽文化に関するデータおよび、前回調査の北タイ・アカ族(ハニ族)を中心とする儀礼、歌謡に関するデータを補強し、また比較・研究する上で、今回のラオス調査は重要な意味を持つものである。また、ラオスに関してはあらゆる面で学術的な研究報告が少なく、とりわけフィールド・ワークを必要とする分野、中でも音楽文化に関する調査報告は稀少であるため、この地域の調査それ自体が重要な意味を持っている。今回の調査は、ラオス北部の中心地であるルアンプラバン、およびその周辺の村落を中心に行われ、この地域の音楽・芸能・儀礼について全般的な実態を調査することができた。その結果、北部のラオ・ルム=低地ラオ人の器楽、歌謡の形態を通して、南と異なる独自の様式や分類概念など、ラオス音楽の全体を把握する上での軸となる概念を押さえるとともに、北タイと共通する要素をも確認することができた。また、周辺の村落調査においても、低地ラオ人に属するタイ・ル-の儀礼や歌謡、モン、ヤオなどの高地ラオ人の歌謡を通して、北タイとの関連および比較のための資料を得ることができた。当初主たる目的としたアカ族を中心とする調査に関しては、今回よりも更に北の山岳地域にその居住地があり、今回の調査期間が比較的短期間であったため直接的な調査を行うことはできなかったが、低地に下りてきたアカ族等の聞き取り調査などにより、ラオスにおけるその現状の概略を把握することができた。中国雲南省、北タイとを三角形に結ぶこの地域が、ハニ族(アカ族)を中心とするこの地域のチベット・ビルマ語系諸族の音楽文化比較研究の上で重要な位置にあることを再確認するとともに、今後の展開のための確実な足場を確保し得たことは大きな成果である。
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