研究課題/領域番号 |
05041025
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
石森 秀三 国立民族学博物館, 第4研究部, 助教授 (60099950)
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研究分担者 |
池田 光穂 熊本大学, 文学部, 助教授 (40211718)
太田 好信 九州大学大学院, 比較社会文化研究科, 助教授 (60203808)
増田 昇 大阪府立大学, 農学部, 助教授 (00181652)
江口 信清 立命館大学, 文学部, 教授 (90185108)
高田 公理 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (40154794)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | エコ・ツーリズム / 観光 / 持続的な観光 / 適正観光 / 観光人類学 / 観光開発 / 生態観光 / 国際協力 |
研究概要 |
(1)平成6年度は、カリブ海地域のうち、島嶼部諸国において複数の調査地を選定して、ナショナル・レベルとコミュニティ・レベルにおけるエコー・ツーリズムの社会的・文化的要因に関する文化人類学的調査を実施した。また、本年度は2年度にわたる本研究の最終年度であるので、調査研究の補足と総括も合わせて行なった。 (2)今年度は、バハマ、バルバドス、キューバ、ドミニカ連邦、ドミニカ共和国、ジャマイカ、プエルトリコ、セント・マーチン、セント・ヴィンセント、トリニダッド・トバゴなどの10の国および地域において調査地を選定して、広範囲にわたる比較調査を実施し、多大の成果を上げることができた。 (3)今年度に調査を行なった10の国および地域はすべてが「観光立国」を積極的に推進している。各国政府の観光省や観光局は国際観光の振興を国家政策として展開している。しかしながら、観光立国の基本政策はマス・ツーリズム(大量観光)志向であり、エコ・ツーリズムに対する政策的配慮の欠けていることが今回の調査で明らかになった。今後、国家の環境保全政策や国立公園政策などと連携した形でエコ・ツーリズムの適正な政策展開が推進されねばならない。 (4)今年度は、コミュニティ・レベルにおけるエコ・ツーリズムの実態に関しても、重点的に調査を行なった。その結果、カリブ海島嶼部諸国および地域ではコミュニティ・レベルにおいても、エコ・ツーリズムのガイドシステムや宿泊システムなどが未整備であることが明らかになった。今後、環境に配慮した観光振興を地域住民の参加のもとに実施する必要性がある。 (5)カリブ海島嶼部諸国および地域では、エコ・ツーリズムの発展を促すための地域連携が十分に行なわれていないことが、今年度の広域的な比較調査で明らかになった。カリブ海島嶼部地域では、すでに1974年に「カリブ観光研究開発センター」がバルバドスに設置され、1989年には「カリブ海地域観光機構」へと発展し、エコ・ツーリズムの調査研究も行なっている。今後、このような国際機関を中心にして、エコ・ツーリズムの適正な発展が図られる可能性がある。 (6)今年度と昨年度の調査研究を比較することによって、カリブ海地域のエコ・ツーリズムに関して、島嶼部諸国と大陸部諸国における類似性と特異性を明らかにすることができた。今後、それらの点について、さまざまな形で学術報告を行なう予定である。 (7)今年度と昨年度の調査研究によって、カリブ海地域の島嶼部諸国と大陸部諸国におけるエコ・ツーリズムおよび観光開発全般に関して貴重なデータの入手が可能になった。その結果、「持続可能な観光」の実現が世界的な課題になっているにもかかわらず、カリブ海地域の開発途上国では、エコ・ツーリズムなどの「持続可能な観光」の推進が十分には行なわれていないことが明らかになった。今後、世界の他の地域においても、同様の調査を行なうことによって、開発途上国において「持続可能な観光」の実現が可能かどうかについて緊急に国際共同研究を行なうことが必要不可欠である。 (8)現在、世界の数多くの開発途上国が「観光立国」を推進しているが、ほとんどがマス・ツーリズム志向で観光振興を図っており、「持続可能な観光」の実現には程遠い状況にある。日本をはじめとする先進諸国はODA(政府開発援助)の活用などをとおして、「持続可能な観光」の実現のために積極的に国際協力を行なう必要がある。本研究の成果は、観光分野における国際協力の推進にあたって、貴重な基礎的データを提供し得るものであり、この分野における国際貢献に寄与することが期待されている。
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