研究分担者 |
コンティチェロ B. ポンペイ考古監督局, 総監
坂井 聰 (財)古代学協会, 古代学研究所, 講師 (20215586)
力丸 厚 法政大学, 工学部, 講師
岩井 経男 弘前大学, 人文学部, 教授 (10113771)
横山 卓雄 同志社大学, 工学部, 教授 (10066243)
丹羽 佑一 香川大学, 経済学部, 教授 (50140471)
平田 隆一 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (00048779)
江谷 寛 (財)古代学協会, 古代学研究所, 教授 (90223651)
岡 道男 姫路獨協大学, 教授 (40025052)
相川 浩 京都工芸繊維大学, 名誉教授 (20027733)
CONTICELLO Baldassare Superintendence of Archaeological Site of Pompeii Superintendent
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研究概要 |
イタリア政府文化財省の許可を受け,9月6日より12月15日まで,ポンペイ遺跡を中心に以下の内容の調査を行った。 1.『カプア門』の存在地と推定される地域において,紀元後79年のウェスウィウス山の噴火による城壁埋没のレベルまで発掘を進めた。発掘調査対象地区をさらに拡張し,城壁を中心とする遺構を東西約80mにわたって検出した。また城壁の外側と内側の両面において発掘を実施することにより,『カプア門』存在推定地の全地域の主要な箇所を発掘調査したが,『カプア門』そのものを検出するにいたらず,城門そのものの存在がきわめて疑わしくなってきた。しかし門そのものの存在を完全に否定するためにはなお慎重な調査を行うことが必要である。また今回の調査において城壁の設置された塔の建築構造の全容が解明された。塔の背後は上面が平らにならされた土盛りがなされており,その上には車の轍の跡と見られる痕跡が認められた。またこの土盛りのすぐ背後に,城壁ときわめて隣接した位置に家屋の壁の一部と見られるものが検出された。塔の西側では乱石積みの石造構築物(城壁強化のための控壁と考えられる)が約20mにわたって続いているが,その西側では切石積みに構築方法が変化しており,その部分では石組が79年当時の地盤面まで抜き取られており,遺構が大きく落ち込んでいることが確認された。それが79年以前のことか,あるいは19世紀以降の盗掘によるものかは,今後の研究の課題の一つである。〔担当者 江谷,丹羽,坂井(以上研究分担者);上野 中山,桐山(以上研究協力者)〕 2.層位の研究 第3次調査によって城壁の両側が噴火当時の79年のレヴェルまで掘り下げられたため,火山堆積物の層位学的研究が可能となった。とりわけ79年の噴火の際にどの段階で火砕流が城壁を乗り越えたのかということに,分析の主眼が置かれた。〔担当者 横山〕 3.出土遺物の整理・分析 発掘面積の拡大および深度の増大のため,多数の火山灰,軽石,火山礫といった自然堆積物ばかりでなく,土器,獣骨などの人工・自然遺物も多量に出土したため,出土遺物の整理・分類が新たに重要な課題となった。〔担当者 江谷,(研究分担者);渡辺,桐山,V.イオリオ(以上研究協力者)〕 4.文献学的調査 『カプア門』の存在そのものが疑わしくなったため,改めて『カプア門』に関する19世紀以降の古記録・研究文献および古地図の収集が必要となったので,ポンペイ考古監督局資料館,ナポリ大学図書館,ナポリ国立博物館図書館等で,資料の収集を行った。〔担当者 岩井,坂井〕 5.都市形成とエトルスキ人 ポンペイ遺跡における最近の考古学的発掘調査の結果,前6世紀に遡ると見^みられるエトルスキ時代の土器などが多数出土しているので,ポンペイ都市建設の起源問題を研究するため,ポンペイ遺跡およびその周辺でのエトルスキ人に関する出土遺物の調査および文献資料の収集を行った。〔担当者 平田〕 以上が第3次調査の概要であるが,とくに本年度の注目すべきことは次の諸点である。 第1は『カプア門』の存在そのものが疑わしくなったため,『カプア門』の検出という当初の目的の実現がきわめて困難となり,発掘の範囲確定が非常に微妙になってきたことである。しかし他方,発掘範囲の拡大のため城壁や塔の構造を明確にすることが一層容易になってきた。第2は『カプア門』の存在が疑わしくなったため,ポンペイ研究史を改めて調査する機会に恵まれたことである。第三は多量の遺物が出土したため,改めてその実測,整理,分類が重要な課題となった。従って,文部省に対し,そのための追加予算の増額を申請し,これが認められたので平成7年度中に再び現地調査を行うこととなった。この追加調査は,平成8年2月22日より3月26日まで行われた。現地考古学監督局の特別の許可を得て,一連の作業は現地にある古代学協会所有の家屋で行うことができた。 また本年度の調査結果は今までと同様,Opuscula Pompeiana VIに発表の予定である。
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