研究課題
1.本年度は、経済発展の進展と農村の変容の程度から珠江デルタ地域農村の典型と考えられる旧宝安県(現在は深〓市宝安区と龍崗区に分区)の農村において現地調査を実施した。具体的な聞き取り調査の対象は、県政府(宝安区政府、龍崗区政府)、公明鎮政府、横崗鎮政府、鎮内郷鎮企業、個別農家などであり、各レベルにおいてヒアリングおよび農家アンケート調査を実施した。この旧宝安県は珠江デルタの東部に位置し香港などとの距離が近いため比較的早くから開発が進展しており、農村の変化が大きい地域であった。2.現地調査からは以下のような成果が得られた。(1)急激な外資の流入によって農村地域の農地は急速に転用され、多くの農民が農業からの離脱を開始し、さまざまな他の職業(企業勤務、商業等)に従事している。(2)同時に外資企業から土地の所有者である村民委員会等にもたらされる地代収入は巨額で村が富裕化するとともに、村民委員会はこの一部を無償で村民に配布し、村民も急速に富裕化している。(3)一方で外資企業の流入とともに雇用機会の爆発的な増加が見られ、これを求めて多数の出稼ぎ農民(広東省山間部や四川省、湖南省等の中国内陸部出身者)がこの地域に流入、治安の悪化などのさまざまな社会問題を発生させつつある。(4)農業は急速に縮小しているが、住民に対する野菜や畜産物供給の確保のために深〓市政府は一定面積の農地の保全の方針を示しており、現地の村民委員会や村民と深〓市政府の間に農地転用をめぐって矛盾、対立が発生、拡大している。
すべて その他
すべて 文献書誌 (4件)