研究課題/領域番号 |
05041065
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
桑原 連 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (80011899)
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研究分担者 |
ANGSUPANICH サオワパ プリンスオブソンクラ大学, 助教授
山中 薫 東京農業大学, 生物産業学部, 助手 (60220422)
成岡 市 東京農業大学, 農学部, 講師 (70211448)
増井 好男 東京農業大学, 農学部, 助教授 (80078196)
山口 征矢 東京水産大学, 教養科, 教授 (70114220)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | 東南アジア / 沿岸生態系 / ラグーン地域 / ソンクラ湖 / 汽水域 / 光合成速度 / 底生生物 / エビ養殖 |
研究概要 |
東南アジア最大の潟湖(lagoon)として知られるタイ国南部ソンクラ湖および沿岸・周辺地域の水界生態系について、生態系構成者であるプランクトン、ベントス(底生生物)、魚類等の分布様相および生産量測定、および水質・底質諸項目の調査を実施し、結果の総合的判断と収集資料から同湖沼の生態学的特性および流入懸濁物による生態系の破壊の実態と修復の方向について解析し検討を加えた。同湖沼水系は4湖とそれらを連結する多数の水路から成り、総面積1,040km^2を有し、その全てを調査するには多大の困難を伴うので、本調査研究では最南部に位置する南湖(Thale Sap)を対象とした。調査の目標は1)雨期・干期の差異、2)諸項目の湖内水平・垂直分布、3)外海開口部から最奥部に至る塩分濃度勾配に支配される水質および生物の変化、等を明らかにする点にあり、これらは水質、ベントス調査結果で特に顕著な結果が得られた。 同湖の生態系は湖岸周辺地域の地形改変、港湾建設、農地化、水産養殖、都市化および工業地帯化などによって破壊を繰り返して来た経移があり、とくに沿岸のマングローブ林の生育が大きな影響を受けている。タイ国で最も顕著なマングローブ林伐採、その跡地でのエビ養殖地建設はソンクラ湖岸地帯で著しく、外海側の湖岸線に沿った海岸砂州一帯は大規模な養殖地が連なり、マングローブ林および水田地帯が失われている。本研究の一部であるラグーン地域の社会経済状況調査においては、それらの経済効果の実態についてまとめ、他国の実態と比較して評価した。 これらの調査結果に基づいて生態系の修復の可能性と範囲についても検討を加えたが、同湖のような潟湖は常時、淡水と海水が侵入、混合して半鹹水の汽水域を形成するのが常で、同時にそのパターンと範囲は著しく変動することも一般的事実である。そのような大きな環境変化によって水生生物の生態系も影響を受け、生物相や生産は変動を繰り返すと同時に湖内の各領域化が明らかで全体的に多様化しているのも事実である。云わば生態系の破壊と修復は常に繰り返されており、その意味では大きな環境変化に対応し得る耐性種が優占し、それらを中心に生態系が構成されていると云うこともできる。したがって水界生態系の全体を目的として修復することは不可能に近いと思われるが、少なくとも上記の人為的インパクトの影響を顕著にこうむるマングローブ林については、積極的修復の手段をを講じる必要性があろう。 水生生物分布と生産および水質環境の調査結果で得られた幾つかの特徴として、1)干期における淡水域、汽水域、海水域の区分は明瞭で、それは雨期に著しく乱される。2)微細な無機質粒子の河川からの流入が著しく、南湖全域で常時おおよそ数10mg/lの濁度分布が見られる。3)クロロフィルa量として測定した植物プランクトン現存量はかなり少ないが、総光合成速度によれば、日本の富栄養湖沼等で得られる通常値の中で最大値に近い、高い生産力を有していた、4)底泥堆積物の有機物量は、日本の富栄養化した内湾域の値に比較して少ない部類に属する、5)底生生物調査は1mmメッシュ上に残存する所謂マクロベントスを対象としたが、南湖全域で約100種が得られ、個体数密度は1,000〜5,000個体/m^2を示した測点(区域)が多く、ほぼ日本沿岸各内湾域の分布密度に近い状況であった。しかし、出現種は日本各地のものとは全く異なり、南シナ海中国側沿岸、ベトナム、インド洋、インド太平洋域などの分布種で構成され、かなりの汽水性の種類を含んでいる。タイ国シャム湾における底生動物の記録がほとんど皆無であり、同時に汽水湖の底生生物相に関する文献が少なく現状では有意義な知見である、等があげられる。 以上の結果に加えて、潟湖の生態系を特色あるものにする大きな環境変化を支配している潟湖の地形と生成要因について、ソンクラ湖水系全体を対象とし地史および歴史的資料に基づき検討した。
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