研究分担者 |
重田 康成 三笠市立博物館, 学芸員
岡本 隆 愛媛大学, 理学部, 講師 (30201990)
二上 政夫 川村学園女子大, 一般教育, 助教授 (50211529)
前田 晴良 京都大学, 理学部, 助手 (10181588)
植村 和彦 国立科学博物館, 地学研究部, 室長 (50000138)
|
研究概要 |
今回調査した各地域において,白亜系と一部新第三系の生層序学的および古地磁気学研究をおこなった。その結果,サントニアン階からマストリヒシアン階の連続層序を観察できるルートが複数存在することが明かになった。特にマカロフ地域では,白亜系のほぼ連続的なセクションが得られ,サハリンの白亜系の標準地域であるナイバ地域とならぶ重要なセクションとなる可能性がでてきた。 マカロフ川流域に分布する白亜系は,ブイコフ層上部と,それを整合で覆うクラスノヤルカ層に分けられ,層厚約2,000mに達する。ブイコフ層中には,Anapachydiscus naumanniおよびEupachydiscus haradaiの伴う層準,Inoceramus schmidtiの産出する層準,Canadoceras sp.の層準が重なっていることが確認され,クラスノヤルカ層中には基底部からCanadoceras kossmati,C.multicostatum,Gaudryceras sp.,Anagaudryceras matsumotoi,Inoceramus hetonaiensis,Pachydiscus aff.gracilis,およびPseudophyllites sp.の産出が,上部からはPachydiscus sp.とLinuparus sp.の産出が確認された。とくに,北海道では確認できないマストリヒシアン階の属種の産出順序や産状がひとつのルートで観察できたことは,大きな成果である。また,プガチェボ地域のクラスノヤルカ層中から,西南日本外帯の和泉層群との共通種が多産することが確認され,白亜紀末の古生物地理を考える上で,貴重な新事実である。今後,古地磁気層序と併せて検討し,環太平洋地域の白亜紀地史および生物群の変遷を明らかにすることができるであろう。 古地磁気学的研究は現在分析中である。これまでの予察的な測定結果から,サハリン地域では白亜紀末期から古第三紀に反時計回りに,それ以降から後期中新世まで続く連続的な時計回りの回転運動があったことが明かとなり,この地域では白亜紀末に海洋プレートの沈み込みが急変した可能性が出てきた。
|