研究概要 |
われわれは,ここ十数年来,ウランの生体濃縮について総合的解析を行い,放線菌,細菌,糸状菌などの微生物が優れたウラン濃縮能を持っていることを見出した。これらの微生物の中にはキレート樹脂に匹敵するか,それ以上の濃縮能を持っているものが存在する。本調査研究では,これらの知見をもとにして,世界の主要ウラン生産国であるアメリカ,カナダのウラン鉱山地域,温泉地域,河川流域などに分布している高性能ウラン濃縮菌を広く検索し,これらの微生物を利用するウランのバイオプロセッシングについて総合的に解析し,未利用ウラン資源の総合開発を図ることを目的とする。 本年度は以上の目的を遂行するため,カナダ国のエリオットレイク鉱床地域,アサバスカ鉱床地域及び米国のフロリダ州リン酸鉱床地域,イエローストン温泉地域,ミシシッピ-川流域地帯,グランドキャニオン地帯などの土壌系,水系から約800種の微生物を分離し,現在,分離菌のウラン濃縮能を解析している。現在までの解析で,カナダ国のエリオットレイク鉱床地域のスタンレー鉱山,デニソン鉱山,アサバスカ鉱床のキ-レイク鉱山,米国のイエローストン温泉地域,フロリダ州パームコースト湿潤地帯,マイアミ地域,グランドキャニオン断層などの土壌系,水系から,90%以上の高率でウランを濃縮できる高性能菌11種を選抜することができた。次年度は,以上の知見をもとにして,本年度検索した鉱床系とは違った鉱床帯や,環境要因の異なる地域において幅広く高性能ウラン濃縮菌を検索する予定である。
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