研究課題/領域番号 |
05041079
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小沼 操 北海道大学, 獣医学部, 教授 (70109510)
|
研究分担者 |
呂 文順 中国蘭州獣医研究所, 教授
藤崎 幸蔵 農林水産省, 家畜衛生試験場, 室長
高橋 清志 酪農学園大学, 獣医学科, 教授 (90048108)
杉本 千尋 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (90231373)
|
研究期間 (年度) |
1993 – 1994
|
キーワード | タイレリ原虫 / PCR / DNA型別 / 原虫の病原性 |
研究概要 |
今年度は韓国・中国・台湾からタイレリア原虫(Theileria sergenti)を採集し解析を行った。解析には以下に述べるDNA型別PCR法を用い原虫の型別を行った。日本各地より分離したT・sergenti分離株の主要表面抗原(P32)遺伝子の塩基配列より設計した特異プライマーを用いたPCR法で、日本各地の分離株はI型、C型およびB型の少くとも3型に分けられることが明らかとなった。本法により日本各地からの分離株15例のうち11例はCとI型の混合感染であった。他の4例はCかI型の単独感染であった。またB型は2株から分離された.このDNA型PCR法を用い東アジアの国々に分布するT・sergentiの型別を行った。韓国からは6地方のウシから37材料ならびに済州島のウシからの10材料の計47材料を得た。2地方の8材料と済州島3材料からはT・sergenti DNAは検出されなかった。残りの36材料からはT・sergentiの感染が確認され、そのDNA型別を行ったところ、地域により差はあるもののI、C、B3型の混合感染しているものが多数認められた。特にI型は全例で認められ日本の分離株に比較しI型が多いことが注目される。 中国からはT・sergenti陽性と確認された5株について検討した。その結果1例ではI、C、Bの3型の混合感染であり、他の4例からはC型のみが検出された。 台湾からは台北周辺の牧場から得られた22材料と南部の牧場から得られた89材料について検討した。台北周辺の22材料のうち15材料でT・sergenti感染が確認され、そのうち4例がCとB型の混合感染であり他の11例からはC型のみが検出された。南部の89材料はすべてT・sergentiが検出されなかった。この結果、台湾のT・sergentiからはI型は全く検出されなかった。 T・sergentiはシベリアのウラジオストックで最初に分離された。そこで今年度ソ連でのタイレリア原虫の分布を知る目的でソ連を訪問し、ロシア科学アカデミーの原虫学者から情報を得た。それによると旧ソ連のカザフスタンやトルクメンスタン等の南部ではT・annulataが分布しており生ワクチンによりコントロールしているとの事である。T・sergentiについては現在研究している研究者はおらず、ほとんど不明であるとの事である。シベリア地区については交通や通信の不便さからT・sergentiが分布していると考えられるがほとんど情報がないとの事である。そこでロシアの研究者によりシベリアを中心にタイレリア原虫を採集してもらい日本で解析する事とした。 T・sergentiと抗原的に交差するT・buffeliやT・crientisが南アジアに分布している。そこでイスラエルのkimron獣医研究所の原虫研究者の協力を得てイスラエルに分布するタイレリア原虫を採集した。イスラエルでのタイレリア原虫はT・annulataが主であり、T・buffeliやT・orientalisには注意に払われていない。今回野外材料を採集し、検討したが4株はすべてT・annulataであった。T・annulataにおいてもT・sergentiと同様に株間での抗原性やDNAレベルでの相異が知られている。今後、イスラエルの共同研究者により多くのT・orientalisを採集してもらい解析することとした。 今年度、東アジアを中心にT・sergentiを採集し、その遺伝子型別を実施した。その結果、日本と同様に中国・韓国においてもI・C・Bの3型の原虫が検出されている。いっぽう台湾からはI型は全く検出されなかった。各DNA型と病原性については十分なデーターはないが、I型は病原性がもっとも強く次いでC型であり、B型は非病原性である。韓国ではI型が全株に認められT・sergentiによる被害が大きい。逆に台湾ではC型とB型が検出されI型は検出されず、本原虫感染がほとんど問題にされていない事と考え合わせると興味深い。
|