研究課題
本年度は8月に武素功、成暁両氏を東京大学に招聘して、中国での植物相調査のための打ち合わせを行なった。同時に、東京大学理学部の標本室に所蔵されている標本をもとにして中国雲南省産植物の研究も行なった。9月中旬から10月中旬にかけて約1ヶ月間、村上と菅原が中国雲南省へ行き、成暁らと協力して保山地区の植物調査および細胞分類学的・分子系統学的解析のための試料の採集を行なった。この地区は予想していたよりも森林の破壊が進んでおり、さらに今年の集中豪雨で道路が寸断されていたこともあって、調査はあまりはかどらなかった。しかし、それでもヤクシマホウビシダモドキ類などヒマラヤから日本南部へとつながる植物相を示標するものを多数採集することができた。ヤクシマホウビシダモドキ類については、日本に持ち帰ったサンプルを解析した結果、rbcLの塩基配列がかなり異なりそれゆえ独立種と考えられるものを複数含んでいることが明かになった。2月上旬から3月中旬にかけて、邑田と河原が中国雲南省へ行き、今度は東南部ベトナム国境近くの文山地区で植物調査ならびに解剖学的・分子系統学的解析用の試料を採集した。この地域は亜熱帯域に属する。世界的に見ても亜熱帯域の森林は破壊が進んでしまっているが、この地域にはまだ良い森林が残存しており、それゆえに植物学的に興味深い植物を多数採集することができた。これから、採集してきた試料の分子系統学的解析を行ない、文山地区の植物相と日本あるいはヒマラヤの植物相との比較をして植物地理学的な理解を深めたいと考えている。
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