研究課題
熱帯サンゴ礁海域におけるシガテラ食中毒の原因藻である付着性渦鞭毛藻Gambierdiscus toxicusの遺伝・生態学的研究を目的として、本年度はタヒチ島を中心とした現地調査を行うとともに、本藻の分類・生理生態学的解析を行い以下のような研究成果を得た。(1)タヒチ島では毎年12月〜1月にG.toxicusが多く発生しており、昨年12月、タヒチ島のHitiaa(北部)とPapara(南部)の2定点を中心に分布調査を行った。サンゴ礁先端に生息する海藻Jania sp.を採取し、付着しているG.toxicusの全計数と付着様態の観察を行った。付着数は観測点によって差が大きく、HitiaaではJania乾重量1g当り1.6×10〜1.1×10^3細胞、Paparaでは1.8×10^2〜1.5×10^5細胞と局所的な分布を示した。またG.toxicusはJaniaに対して細胞先端を垂直にして付着したり粘質物中に埋もれて間接的な付着をしていた。また本藻はJaniaに付着し続けているのではなく、多くの細胞は枝の周辺を遊泳しており、海水の攪乱に伴い遊泳を停止して付着することが明らかになった。(2)タヒチ島および周辺海域よりG.toxicusの分離を試み20株の培養株を得た。培養条件を検討したところ、25℃でPES培地により最大増殖が得られた。次に分子系統分類に用いられる16SrRNA遺伝子解析のために、Hitiaa産本藻よりDNA調製法を検討して全DNAの精製法を確立した。次に精製DNAを鋳型としてPCR法を行い、その増幅産物は部分塩基配列より16SrDNA断片であることが明らかとなった。また得られた塩基配列より渦鞭毛藻他属との分子系統樹を作製した。現在16SrDNAの全塩基配列を決定中であり、本藻のより詳細な系統分類学的位置を決定するとともに地域差についても分子レベルで検討する予定である。
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