1993 年度実績報告書

オセアニアの焼畑農耕民の生活環境及び資源利用の変容と健康に関する医学生態学調査

研究課題

研究課題/領域番号	05041108
研究機関	東京大学
研究代表者	大塚柳太郎東京大学, 医学部, 教授 (60010071)
研究分担者	中澤港東京大学, 医学部, 助手 (40251227) 川端真人神戸大学, 医学部, 教授 (30175294) 口蔵幸雄岐阜大学, 教養部, 教授 (10153298)
キーワード	焼畑農耕 / 近代化 / 人口再生産率 / 感染症罹患率 / 栄養状態 / マラリア / 人口支持力 / 農村一都市移住
研究概要	パプアニューギニア西部高地州のフリ族とカルリ族を対象とした、本年度の調査研究の主要な結果は以下のとおりである。 1.フリ族の居住地の中で、土壌がよく人口密度の高い平野部と、土壌が痩せ人口密度も低い山地部において対照的な適応機構、すなわち前者で、感染症の罹患率は高いにもかかわらずBody mass indexをはじめとする生体計測値と乳児死亡率などから栄養・健康状態が優れることを明らかにした。 2.フリ族の人口再生産率・人口増加率は平野部で高いものの、両地域の人口支持力(主として農業生産性)の違いのため、農村一都市移住率については両集団間で顕著な差はなく、オセアニアの焼畑農耕民の近代化への対応という点では、原因が異なるものの両者とも深刻な状況にあることを明らかとした。 3.当初予定していたサンプル集団に対する採血は、現地の状況と当該地域のパプアニューギニア医学研究所のスタッフとの協議でミニマムなサイズにとどめた。しかしながら、同研究所が過去20年間にわたって収集しているフリ族の人口動態・出生・死亡・罹患に関する約1万人を対象とする資料を、われわれのチームが解析することが可能となり、実際に着手している。 4.フリ族と対照的な適応状態を示すカルリ族(南側に隣接するものの、焼畑よりもサゴヤシ採集に強く依存)では、マラリア罹患率が高いこと、近代化の影響が弱いことから、人口増加率は現在もきわめて低く農村一都市移住率も低いことが明らかとなった。カルリ族のデータは近代化の影響を強く受け始めているフリ族の適応を明らかにする上で、重要な比較資料となる。 5.この両集団(高地集団)については短期間の補充調査と膨大な資料の解析を継続して行うが、来年度以降は当初の予定どおり低地の集団と山麓部の集団の調査研究に主力を移す。

研究成果
(8件)

すべてその他

すべて文献書誌 (8件)

[文献書誌] Hongo,T.: "Nutrient compositions of Papua New Guinea foods" Man and Culture in Oceania. 9. 103-125 (1993)
[文献書誌] Ohtsuka,R.: "The human ecologists' contribution to PLEC." PLEC News and Views. 1. 26-27 (1993)
[文献書誌] Ohtsuka,R.: "Introduction to the Proceedings of the Symposium,“Methodologies of ecological field surveys."" Anthropological Science. 102(1). 1-2 (1994)
[文献書誌] Ohtsuka,R.: "Genealogical-demographic analysis of the long-term adaptation of a human population:Methodological implications" Anthropological Science. 102(1). 49-57 (1994)
[文献書誌] Kuchikura,Y.: "Methods and problems of food consumption surveys in Papua New Guinea populations" Anthropological Science. 102(1). 23-38 (1994)
[文献書誌] 大塚柳太郎(編): "オセアニア1:島嶼に生きる" 東京大学出版会, 253 (1993)
[文献書誌] 有馬朗人: "東京大学公開講座:性差と文化" 東京大学出版会, 297 (1993)
[文献書誌] C.M.Hladik et al.(eds.): "Tropical Forests,People and Food:Biocultural Interactions and Application to Development" UNESCO,Paris, 852 (1993)

1993 年度 実績報告書

オセアニアの焼畑農耕民の生活環境及び資源利用の変容と健康に関する医学生態学調査

研究代表者

大塚 柳太郎 東京大学, 医学部, 教授 (60010071)

研究成果

[文献書誌] Hongo,T.: "Nutrient compositions of Papua New Guinea foods" Man and Culture in Oceania. 9. 103-125 (1993)

[文献書誌] Ohtsuka,R.: "The human ecologists' contribution to PLEC." PLEC News and Views. 1. 26-27 (1993)

[文献書誌] Ohtsuka,R.: "Introduction to the Proceedings of the Symposium,“Methodologies of ecological field surveys."" Anthropological Science. 102(1). 1-2 (1994)

[文献書誌] Ohtsuka,R.: "Genealogical-demographic analysis of the long-term adaptation of a human population:Methodological implications" Anthropological Science. 102(1). 49-57 (1994)

[文献書誌] Kuchikura,Y.: "Methods and problems of food consumption surveys in Papua New Guinea populations" Anthropological Science. 102(1). 23-38 (1994)

[文献書誌] 大塚柳太郎(編): "オセアニア1:島嶼に生きる" 東京大学出版会, 253 (1993)

[文献書誌] 有馬朗人: "東京大学公開講座:性差と文化" 東京大学出版会, 297 (1993)

[文献書誌] C.M.Hladik et al.(eds.): "Tropical Forests,People and Food:Biocultural Interactions and Application to Development" UNESCO,Paris, 852 (1993)

1993 年度実績報告書

大塚柳太郎東京大学, 医学部, 教授 (60010071)