研究課題/領域番号 |
05041109
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
神野 耕太郎 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (40025630)
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研究分担者 |
SALZBERG Bri 米国ペンシルバニア大学, 医学部, 教授
COHEN Lawren 米国エール大学, 医学部, 教授
廣田 秋彦 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (50156717)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | 中枢神経系 / 膜電位感受性色素 / 光学測定 / 膜電位 |
研究概要 |
膜電位感受性色素としては従来、メロシアニン・ロ-ダニン系、オキソノール系、スタイリイル系が用いられてきているが、細胞膜電位変化に対してより高感度を示し、従来用いられている色素でモニターできるよりも微小な電位変化を検出できる色素が求められている。このような目的で、新しい膜電位感受性色素の探索が、われわれの研究室と国外のいくつかの研究室で進められている。本研究では、最も活発な研究が行なわれている、エール大学を中心とした米国東部における研究状況の調査とそれに関する情報収集を行なうと同時に、共同研究の可能性についての検討を行なった。 まず、平成5年度には、エール大学のL.B.Cohenの研究室において、インドジカーボシアニン系色素のアルキル基を(C_8H_<17>)_2あるいは(C_<12>H_<25>)で置換した色素を合成し、これを鶏胚の脊髄神経から注入して脊髄内のニューロンを細胞内部から染色して、これに電気刺激によって引き起こされる螢光変化を記録することによって、その応答パターンから脊髄内におけるニューロン群の分布および神経線維の走行を追跡する試みがあることを知った。この方法は、従来行なわれてきている色素注入法による形態観察の手法を、膜電位感受性色素を用いることによって、ダイナミックな方法として展開しようとするもので、これから発展することが期待される。これに関して、新しい色素の開発の可能性について、かなり突っ込んだ議論を行い、いくつかの色素のデザインを行なうことができた。これは、すでに合成の段階に入っている。ウッズホールのMBL(生物実験所)では、B.M.Salzbergの研究室を中心として情報収集ならびに共同実験を行なった。この研究室では、螢光色素の探索と開発が行なわれており、新しく合成されたnaptyl-stylyl classのdi-8-ANEPPSが開発合成され、腸内神経叢のニューロン活動検出への適用について検討した。 平成6年度は、平成5年度に引き続き、米国ウッズホールMBL(Marine Biological Laboratory)、エール大学、ペンシルバニア大学において、膜電位感受性色素の開発と適用についての研究状況の調査ならびに協同研究を行った。まず、新しい膜電位感受性色素として、styryl系色素としてdi-2-ANEPPS、di-4-ANEPPS、di-8-ANEPPS、di-12-ANEPPSの開発合成とそれを用いた新しい標識法によるニューロン活動の光学的測定が、新しい動向として出てきたことが挙げられる。これらの色素は、細胞に光化学的作用を与えるという欠点はあるが、膜電位変化に対する応答時間が極めて短いという利点があり、入射光量を調節することによって、短時間の計測では、従来の色素では困難であった測定ができるという利点をもっていることがわかった。 1.ペンシルバニア大学のB.M.Salzbergの研究室では、di-8-ANEPPSを昨年の腸内神経叢に続き、培養心筋細胞に適用し、電位活動を蛍光シグナルとして記録することに成功した。これは、収縮によりア-ティファクトの介入が小さいという点で、心筋電位活動の光学的計測用色素として有利である。 2.エール大学、MBLにおけるL.B.Cohenの研究室では、di-n-ANEPPS(n=2、4、8、12)を鶏胚脊髄標本で背側神経根から注入し、脊髄内の感覚ニューロンを選択的に標識し、そこのニューロン活動を光学的シグナルとして記録する試みが行われた。この実験では、di-8-ANEPPSが最も良い結果を与えた。di-12-ANEPPSでは、脊髄内へのかなり広範囲領域への拡散が起こったが、これは色素の疎水性が大きいためと考えられた。 以上の調査研究は、次年度からの協同研究として組織されることになっている。
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