研究課題
国際学術研究
成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia:ATL)はHuman T-Lymphotropic Virus Type1(HTLV-1)の感染によって発病するウイルス性白血病である。HTLV-1は幾つかの感染流行地域があり、日本では沖縄、九州(特に鹿児島、長崎)、南四国、紀伊半島などが知られている。世界的には、カリブ海地方、南アメリカ、インド、アフリカなどの一部から流行地の報告が成されている。我々南太平洋海域研究センターにおいては1982年より本報告者(寺師ら)により、オセアニア海域で人血清中のHTLV-1抗体の検索を行ってきた。本年度はソロモン諸島ならびに、フィジ-の東に位置する、西サモア(メラネシア)で調査研究を行った。同国の首都アピアには、西サモア中央病院があり、臨床検査室部門のMicrobiological Laboratory & Biochemical Laboratoryならびに、Western Samoa Red Cross Blood Transfusion Sectionにおいて検体収集を行った。検査方法はFUJIREBIOのセロデアHTLV-1キットによるParticle-Agglutination法で検索した。検査対象者の年齢ならびに、性別についていは以下に記すごとくであった。0〜10才の年齢層では男性の11例ならびに、女性の11例を、11〜20才の年齢層については、男性の45例と女性の55例の検索を行った。21〜30才の年齢層は男性の76例と女性は96例を、31〜40才の年齢層では男性の59例および、女性の72例の検体が得られた。41〜50才の年齢層では男性の46例ならびに、女性の49例を、51〜60才の年齢層で、男性については49検体と女性の47検体の検索が可能であった。61〜70才の年齢層の男性は48例を女性の35例の血清と、71〜80才の範囲では男性では18例と女性の10例の血清HTLV-1抗体を調べた。81才以上の年齢層には男性の7例と女性の6例の検体があった。Adultのみとしてのしか記録の無かった検体は、男性例の31と女性の19例である。年齢不詳例は男性の11検体と女性の6検体について、また年齢および性別不詳グループでは5例について検索を行った。年齢層分布において、男性の最若年者は2才で高齢者は99才、女性の最若年者は4才で高齢者は84才であった。11才から20才までの男女総計検索数は100例で全体の12.3%、21才から30才までの検索数は男女総計172例で全体の21.2%、31才から40才までの症例では男女総計131検体が検索され、これは全体の16.1%に相当する。11才から40才までの年齢層の総計については、男女あわせて403例で全症例のほぼ半数にあたる49.6%を示していた。年齢をAdultのみとするもの男女合計50名で全体の6.2%、年齢不詳は男女17名で2.1%を占めていた。年齢および性別不詳は全体の0.6%にに相当する。総括:本年度の西サモアにおけるHTLV-1抗体の総検索数は812例であったが、そのうちHTLV-1抗体の陽性者は一例も見られなかった。このことは、過去におけるオセアニア海域でのHTLV-1抗体検査で、西サモアに近接するソロモン諸島ならびにフィジ-で抗体の陽性者の無かったこととあわせて興味ある結果が得られた。今後、西サモアの首都アピア以外の診療所において、本年度と同様の調査研究を計画している。
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