研究課題
前年度に引き続き、ヒト、チンパンジー、サル、及びハトを対称に、「知性」の諸側面に関して相互比較が可能な資料を実験的に収集し、「知性」の進化について総合的に考察した。「知性」は必ずしも明確に定義された概念ではないが、本研究では、「知性」を概念形成、言語、記憶、推論などといった諸能力の有機的連関ととらえる。言語、推論、記憶、知識、概念形成の実験をそれぞれの担当者が企画・実施する。言語の研究では、語の獲得、文法の形成・習得、文の生成、個体間コミュニケーション、等が分析の対象となる。推論の研究では、系列学習を用いた推移的推論の分析や、記号の対応学習による論理的推論の分析をめざした。6年度は、ヒト、チンパンジー、サルを被験者として数の操作、錯視、視覚探索といった視覚情報処理の研究と、視聴覚特性との関連を引き続き究明した。国際共同として、数の操作の研究を推進しているサリ-・ボイセン博士や、キム・バ-ド博士、アン・ラッソン博士の来日を企画し共同研究をおこなった。コンピュータ利用の描画と模倣についてイバーセン博士が来日して継続研究をおこなった。なお、これらはいずれも相互に関連をもつ認知機能であって、研究チーム構成員間で十分な論議をおこない、互いに有機的に関連しあったデータの収集をめざした。さらに飼育集団や野性群を対象として、竹下秀子が上記の知性の実験的研究をオランダ・ア-ネム群で推進した。こうしたデータを相互に比較可能なものにするために、できる限り刺激や手続きを共通なものにする努力をした。知性にかんする比較研究のワークショップを来年度に開催する計画で検討準備をおこなった。
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