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1994 年度 研究成果報告書概要

東アジアにおける古代土器の伝播・流通に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 05044009
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分共同研究
研究機関奈良教育大学

研究代表者

三辻 利一  奈良教育大学, 教育学部, 教授 (40031546)

研究分担者 洪 しん植  釜山市立博物館, 研究士
金 正完  國立扶余博物館, 考古学, 室長
安 在晧  東國大学校, 文学部, 助教授
申 敬徹  慶星大学校, 文学部, 教授
中園 聡  九州大学, 文学部, 助手 (90243865)
北野 耕平  神戸商船大学, 商船学部, 教授 (80031433)
脇田 宗孝  奈良教育大学, 教育学部, 教授 (10109118)
中村 浩  大谷女子大学, 文学部, 教授 (10121873)
SHINSYOKU Kou  Chief Investigator of Pusan Ctiy Museum
SEIKAN Kim  Head Investigator of Puyo National Museum
ZAIKOKU An  Associate Professor of Tohgoku Univ.
KEITETSU Shin  Professor of Kyung Sung University
研究期間 (年度) 1993 – 1994
キーワード古代土器 / 産地推定 / 日韓交流 / 勒島 / 弥生土器 / 桂城・古墳群 / 陶邑産須恵器 / 蛍光X線分析
研究概要

胎土分析により、古代土器の日韓交流を追跡する目的をもって、韓国内の窯跡および遺跡(古墳、住居跡)出土の軟質土器、瓦質土器、陶質土器片が蛍光X線分析法により分析された。比較試料として、日本国内の遺跡出土弥生土器、窯跡出土須恵器の分析データが使用された。
はじめに、桃源洞窯跡から出土した軟質土器と硬質土器の素材粘土が同じかどうかという観点から分析データが解析された。硬質土器に比べて、軟質土器には明かにCa、Sr量が多く、別胎土であった。高温焼成によって粘土の化学特性が変動しないことが実験的に確かめられているので、両者の素材粘土は別物ということになる。焼成方法の異なる2つの土器で素材粘土を使い分けた訳である。このようなことは金海鳳凰台遺跡をはじめ、数ヶ所の遺跡でも確認されており、また、日本の弥生土器(軟質)と須恵器(硬質)の間でも認められた。ロクロを廻して粘土から器の形を作り、比較的低温で焼成した瓦質土器にもCa、Sr量が多い傾向があることが認められた。したがって、主成分元素Caの含有量の多少はロクロによる粘土の形成には無関係であり、やはり、高温焼成技術と深い関係があるようである。ただ、その因果関係は目下のところ、未解明である。
次に、韓国側の軟質土器と日本の弥生土器胎土の化学特性に違いがあるかどうかという問題である。多くの遺跡から出土した両土器を分析した結果、韓国産の軟質土器にはK、Rb、Sr量が多い傾向があることが判明した。そうすると、このデータを活用すると、日本の弥生土器が韓国へ伝播・流通したかどうかがわかる訳である。かねてから、日本の考古学者達によって、韓国の勒島住居跡から出土する軟質土器群の中に、日本の弥生土器があるといわれてきた。約50点の試料を分析した結果、胎土分析によって2群の胎土があることが判明した。しかも、その中の少数波は九州北部地域の弥生土器の胎土と一致した。このことは九州北部地域から勒島へ弥生土器が伝播したことを示している。逆に、韓国産の軟質土器が九州北部地域へ伝播している可能性もあるが、今回はそのデータは出ていない。
次に、陶質土器の問題である。韓国内では日本に比べて窯跡の発掘調査は大きくおくれているが、望星里窯群、徳山里窯群、上辛里窯群(以上慶州)、新塘洞窯群(大邱)、内谷洞窯群(高霊)、余草里窯群(昌寧)、〓湲堤窯群(陜州)などの新羅、伽那諸国の主要な窯群出土陶質土器の化学特性は求められている。これらの陶質土器の間で、化学特性は若干異なるが、それでも、日本の初期須恵器に比べれば、K、Ca、Rb、Sr量が多い傾向が認められた。このことは両国間の軟質土器の化学特性に見られる傾向と一致する。そして、伽那諸国の多くの古墳出土陶質土器を分析した結果、福泉洞古墳群などの多くの古墳の硬質土器は韓国産の陶質土器であったが、昌寧の桂城B地区古墳群からはCa、Sr量が少なく、韓国内のどの窯跡の陶質土器にも対応しない胎土をもつ硬質土器も出土した。この土器胎土は日本の大阪陶邑産の須恵器胎土の化学特性をもつことが判明した。これまでに日本の考古学者達によって、慶尚南道地域の古墳群の中に、陶邑の須恵器の類似品があることが指摘されてきたが、それが今回の国際共同研究によって、確認された訳である。勿論、日本側の古墳にも陶質土器が確認されており、弥生時代から古墳時代にかけて、土器が日韓両国間を伝播していたことが証明された。今後、それらが両国内のどの地域の製品であるか、より詳細な研究へと発展することが期待される。
最後は韓国内での陶質土器の伝播・流通の問題である。大伽那の内谷洞窯群の製品と同じ胎土をもつ陶質土器は大伽那の豪族の墳墓と考えられている池山洞古墳群、本館洞古墳群から大量に出土している。そればかりか、これと同じ胎土をもつ陶質土器は他の伽那諸国の墳墓からも出土しており、大伽那を盟主とする大伽那連合の実在を示唆する。この問題は今回の共同研究だけで解決された訳ではないが、今後の研究の足掛かりとなるであろう。

  • 研究成果

    (14件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (14件)

  • [文献書誌] 三辻利一: "初期須恵器の産地推定法" X線分析の進歩. 23. 205-224 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 三辻利一: "星塚1-2前墳および小路遺跡出土須恵器と陶質土器の産地推定" 檀原考古学研究所論集. 12. 413-457 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 三辻利一: "福泉洞萃城遺跡出土 弥生系土器の蛍光X線分析" 釜山市立博物館研究論集. 239-242 (1993)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 三辻利一: "蛍光X線分析法による古代土器の産地推定法の開発" 理学ジャーナル. 25. 32-42 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 三辻利一: "胎土分析からみた朝鮮半島産 陶質土器(「古代朝鮮と日本」に掲載" 名著出版, 46 (1990)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 三辻利一: "朝鮮三国時代土器窯跡から出土した土器の胎土分析(「陶質土器の研究」に掲載" 由良大和古代文化研究会, 40 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 三辻利一: "古代土器の産地推定法" ニューサイエンス社, 100 (1983)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] Toshikazu Mitsuji: "A New Method for Sourcing of Earliest Sue Ware" Advanced X-ray Analysis. 23. 205-224 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Toshikazu Mitsuji and Takeshi Izumi: "Sourcing of hard ware Excavated from Hoshizuka No.1, No.2 tomb sites and Shouji site" Kashiwara Koukogaku Kenkyusho ronshyu. 12. 413-457 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Toshikazu Mitsuji: "X-ray Fluorescence Analysis of Soft ware and pottery excavated from Fukusendou tomb sites" Bulletin of Pusan City Museum. 239-242 (1993)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Toshikazu Mitsuji: "A New Method for Sourcing of the Japanese Ancient Ceramics" Rigaku Journal. 25. 32-42 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Toshikazu Mitsuji: Meicho Shupan. Elemental Analysis of Korean Hard Ware, 175-221 (1990)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Toshikazu Mitsuji: Yura Yamato Kodai Bunka Kenkyukai. Studies on Korean Hard Ware in Three Kingdom Period, 99-139 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Toshikazu Mitsuji: New Science Co.Sourcing Method of Japanese Ancient Ceramics, 1-100 (1983)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より

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公開日: 1996-04-15  

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