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1995 年度 研究成果報告書概要

漆・ニスなど伝統的天然樹脂塗膜の劣化と保存に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 05044012
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分共同研究
研究機関東京国立文化財研究所

研究代表者

三浦 定俊  東京国立文化財研究所, 保存科学部, 部長 (50099925)

研究分担者 バーメスター A.  ババリア州立デルナー研究所, 科学部, 部長
エンデレス S.  ヘッセン州文化財保存研究所, 調査官
キューレンタール M.  ババリア州立文化財保存研究所, 修復部, 部長
沢田 正昭  奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 部長 (20000490)
工楽 普通  奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (00000472)
加藤 寛  東京国立博物館, 室長 (70161114)
川野邊 渉  東京国立文化財研究所, 修復技術部, 主任研究官 (00169749)
松本 修自  東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (80099960)
中里 寿克  東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (20000458)
佐野 千絵  東京国立文化財研究所, 保存科学部, 主任研究官 (40215885)
西川 杏太郎  東京国立文化財研究所, 所長 (70000304)
KUHLENTHAL M.  Bavarian State Conservation Office
BURMESTER A.  Doerner Institute, State of Bavarian
研究期間 (年度) 1993 – 1995
キーワード漆 / ラッカー / 技術史 / 保存科学 / 修復処置 / 材質分析
研究概要

今年度は最終年度に当たるので、これまでに作成した漆試料を用い、ドイツ側研究者と協力して、1.漆の分析手法を確立し、2.ドイツ国内の漆関係資料の調査を行い、今度の修復に向けての基礎的な試料とすると共に、保存方法や作品の由来などについて検討することを目的として、3.漆の伝統的な技法について輪島、高山、沖縄などで調査を行い、ドイツ国内にある作品に用いられている技法と比較した。以下、それぞれの項目について研究実績の概要を述べる。
1.漆の分析手法について
ドイツを含む諸外国のコレクションや日本国内から発掘される考古遺物の中に、漆製品として説明されているものが数多くあるが、それらが真の意味で漆であるのか、あるいはそれ以外に樹脂であるのか判定することは、歴史的にも保存・修復の上でもきわめて重要である・しかし従来、漆の分析については、液状の漆については分析方法が示されているものの、硬化した漆塗膜については、硬化反応後、漆三次元構造を取るためにほとんどの溶媒に溶けなくなり、一般的な溶液試料を対象とした有機分析手法を適用することは困難であった。
今回利用した熱分解クロマトグラフィー法は、固体試料に適用することが可能であり、熱分解条件を厳密に制御することによって、得られるピークパターンを利用して、各種試料の判別・同定に用いることができる。共同研究を行っているドイツでは、この手法を用いて油彩画のニスの分析を行っていて、作品に用いられた樹脂の種類がある程度絞り込める場合には、樹脂の種類だけでなく、樹脂の産地や樹脂の混合比率についても情報を得ることができる。
本研究では漆のみを硬化させた試料、呂色塗漆試料、朱色塗漆試料、アイボリーブラックを混ぜた黒色漆試料、ウルシオールのみの熱硬化試料、古い時代の漆試料などをガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果、漆のみを硬化させた試料、呂色塗漆試料、アイボリーブラックを混ぜた黒色漆試料、ウルシオールのみの熱硬化試料などの試料については、特徴的な熱分解パターンが得られ、その試料が漆であるかどうかについての情報を得られることがわかった。この方法の利点は比較的簡便な装置で、試料も数mgと極少量ですむこと、分析時間も短いことなどである。
2.ドイツ国内の漆関係資料の調査
7月に訪独して、ドイツ国内の漆工芸資料についての調査を行った。調査した場所はミュンヘン、ドレスデン、ケルン、バ-デンなどであるが、特にドレスデンのピルニッツ城やヘッセン州バド・ホンブルグのヴィルヘルムスタール城など古い城の所有する調度品に、漆ないしはその類似品と思われるものが多かった。これらの製品は大きく分けて、(1)日本製と考えられる製品、(2)中国製と考えられる製品、(3)ヨーロッパ製と考えられる製品の3種類になると考えられたが、(1)と(2)の中間に琉球製らしき製品もあり、また日本でつくられた物を調度品の一部として再利用して、ヨーロッパで組み立てたと思われる物もあり、(1)、(2)、(3)の区分は必ずしも明確ではない。さらに修理の際に本来は漆製であった物の上から、失われた艶を出すためにダンマー樹脂などを塗った作品も数多くあり、作品の保存修理に当たっては、対象とする作品の由来や技法、材料について充分な調査を必要とすることが明らかになった。
3.漆の伝統的技法に関する調査
2で述べたように、日本製の漆製品と中国製漆製品の中間として琉球漆器の技法があり、この点に関する調査が必要であることがわかったので、11月にドイツ側研究者と共に調査を行い、3月に記録のための再調査を行った。日本の伝統的漆芸技法として、輪島では蒔絵や沈金などの技法を調査し、沖縄では琉球漆器独特の技法である堆錦、豚血下地などの技法を調査した。技法の違いはその気候の違いに関連していて、保存・修復についても気象環境についての配慮が必要であることがわかった。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (2件)

  • [文献書誌] 川野辺 渉: "熱分解ガスクロマトグラフィーによる漆試料の同定の可能性について" 保存科学. 35(印刷中). (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] Wataru, KAWANOBE: "Possibility of Identification of urushi Materials with Pyrolysis-Gas Chromatography" Science for Conservation. 35 (in press). (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より

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公開日: 1997-03-04  

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