研究課題
国際学術研究
(1)『完成せるヨーガの環』の研究として、第9章「マハーマ-ヤ-・マンダラ」、第11章「ヴァジュラフーンカーラ・マンダラ」第17章「マ-リーチ-・マンダラ」の三つの章(森担当)、第8章「ヴァジュラターラー・マンダラ」、第10章「チャクラサンブァラ・マンダラ」、第20章「悪趣清浄マンダラ」の三つの章(立川担当)、第26章「時輸マンダラ(パフルカル担当)のサンスクリット・テキストとチベット訳テキストの校訂および翻訳を行い、出版の準備を進めている。また同文献に含まれるマンダラの全尊格のサンスクリットとチベット語の尊名リストを公表する予定である。第19章「金剛界マンダラ」の和訳、サンスクリット・テキスト、チベット語テキストおよび訳註(立川担当)は『密教図像』No.14に発表した。(2)第15回密教図像学会において「『完成せるヨーガの環』の成立に関する一考察」と題して研究発表を行った。この中で『完成せるヨーガの環』の著者がインド密教の広範囲の文献を網羅的に参照し、さらに実際にマンダラを作成する手順を『ヴァジュラーブァリ-』において説明するための利便性を考慮してこの文献を著述したことを明らかにした。発表の内容は『密教図像』第15号に掲載が予定されている。(森担当)(3)マンダラの機能を実践面から検証し、ふたつの密教儀礼アビシェ-カとプラティシュタ-においてマンダラがどのように活用されているかを『高野山大学密教文化研究所紀要』第9号とMonumenta Serindica第26号において発表した。(森担当)(4)インドのオリッサ、ベンガル、ビハ-ルの3州において現地調査を行い、マンダラに含まれる主要な尊格の図像学的特徴を明らかにし、文献に記述されるイメージと実際に作例に見られるイメージとの差異を検証した。これによってネパール、チベットのマンダラとの比較研究と行うための基礎資料を集成することができた。この成果の一部は『高野山大学論叢』第31巻において発表した。(森担当)(5)ネパールに伝わるヒンドゥー教の図像資料の研究として、ネパール国立古文書館が所蔵するDevimahatmya絵図に、研究と図版解説を付してユネスコ東アジア文化研究センターから刊行した。この作品は、ヒンドゥー図像学ばかりではなく、仏教図像を含むネパール美術の研究のための基礎資料としても注目すべき作品である。(森担当)(6)1995年3月に出版したFive Hundred Tibetan Buddhist Deitiesを改訂し、『アジア図像叢書』(Asian Iconography Series)第一巻として汲古書院より刊行予定。このシリーズには『三百六十尊密教図像集』(第二巻)、『ミトラヨ-ギン密教図像集』(第三巻)、『百八観自在図像集』(第四巻)が含められる予定である。(全員で分担)(7)ポン教のマンダラ図を収集することができた。これに関する研究はまだ始まったばかりであるが、その一部は『マンダラ』(学習研究社、平成8年5月刊行予定)に発表予定。(立川、長野担当)(8)カトマンドゥ盆地のネワール僧およびチベット僧の間にわずかに残っている観想法実践の形態を調査した。観想法は大別して古典ヨーガに基づくものと密教的ヨーガに基づくものとの二種があり、後者しばしば憑依と関係するという仮設を立てた。これについては『マンダラ観想法』(仮題、角川書店)に発表予定である。(立川担当)(9)カトマンドゥ盆地におけるネワール仏教パンテオンの彫像、絵図約500点を含む報告書を『新編・曼茶羅の神々』(ありな書房)として出版予定である。(立川担当)(10)現代社会にとってマンダラの伝統が寄与するところがあるとすれば、それは世界の自己との間の順調なエネルギー循環であろう。マンダラは精神障害の治療、ターミナル・ケアなどにおけるあり得べき自己の精神生理学状態のモデルということができる。このモデルを現実的なものたらしめることが現代のマンダラ研究の課題であることの再確認をした。この研究の成果の一部は『マンダラ』(学習研究社 平成8年5月刊行予定)に発表予定である。(全員が担当)
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