中央アジア・カザフスタンの環境と経済の再生計画

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05044019
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 塚谷 恒雄 京都大学, 経済研究所, 教授 (90027459)
• 研究分担者: テイラー J.A. 豪州国立大学, 資源環境研究センター, 助教授 ; ニックス H.A. 豪州国立大学, 資源環境研究センター, 所長 ; アルマベコビッチ U.R カザフ農業科学アカデミー, 教授 ; スルタンガジン U.M. カザフ科学アカデミー, 総裁 ; 江崎 光男 名古屋大学, 大学院, 教授 (60029915) ; 今井 賢一 スタンフォード大学, 教授 ; 福嶌 義宏 京都大学, 農学部, 助教授 (00026402) ; 石田 紀郎 京都大学, 農学部, 助教授 (80026434) ; 溝端 佐登史 京都大学, 経済研究所, 助教授 (30239264)
• キーワード: 中央アジア / カザフスタン / アラル海 / 核実験 / 乾燥地農業 / 潅漑 / 社会主義経済 / 市場経済化

研究概要

1 バルハシ湖集水域調査は、イリ川流域のベレケ農場で開始し、農学的項目、気象、水文、植物等に関し継続観測を行っている。中央アジアでのこの種の観測は初めてのものである。カザフ科学アカデミー、同農業科学アカデミーからは基礎的データの提供を受け、共同研究は順調に進んでいる。
2 バルハシ湖自体の水循環、化学物質分布、動植物生態に関する観測は約1カ月にわたって実施された。周辺は核兵器を含む軍事地帯であるため、この観測も世界初である。標本は現在、京都大学において分析中である。なお乾燥地における閉鎖流入湖の除塩機構について、バルハシ湖をモデルにした仮説を構築中である。
3 環境汚染による健康被害調査に関して、セミパラチンスク核実験の被害を中心に分析した。先ず既存の衛生統計を分析したが、隣接する東カザフスタン州のガン発生率が有意に高いことがわかった。またシルダリヤ、アムダリヤ流域での環境汚染発生の社会経済的要因を1950年代以降の社会主義経済との関連で分析した。
4 市場経済移行過程での経済学的分析では、1993年7月のロシアの新ルーブル導入によるカザフスタン経済への影響、消費者物価指数年2,600%上昇という超インフレに起因する新通貨テンゲの導入、および外国資本導入のための経済政策を分析した。事態は依然流動的であり、国際的経済支援が緊急の課題である。
5 なおカザフ科学アカデミーと共同で環境回復の研究プロジェクト案を策定し、現在各方面に提示中である。また同アカデミーによる従来の環境関連研究体系を整理したカザフスタン環境研究データベースを作製中である。

研究成果

• [文献書誌] 塚谷恒雄: "中央アジアの政治経済管見 大規模綿花モノカルチャーの光と影" 水文・水資源学会誌. 7 (印刷中). (1994)
• [文献書誌] S.バルムハ-ノフ: "セミパラチンスク核実験場とソ連の核開発" KIERディスカッション・ペーパー・シリーズ. No.9308. 1-70 (1994)
• [文献書誌] Mitsuo Ezaki: "Growth and Structure Changes in Asian Countries" KIER Discussion Paper Series. No.396. 1-32 (1994)
• [文献書誌] 福嶌 義宏: "異なる視点からの中央アジア問題" 水文・水資源学会誌. 7 (印刷中). (1994)
• [文献書誌] U.M.Sultangazin: "Kazakhstan's Science about the Ecological Problems of the Republic and the Perspectives of their Solution" Proceedings of Kyoto Workshop of Central Asian Renaissance. (編集中). (1994)
• [文献書誌] M.Sh.Ishankulov: "Influence of Environmental Pollution on Health of Inhabitants of Kazakhstan" Proceedings of Kyoto Workshop of Central Asian Renaissance. (編集中). (1994)
• [文献書誌] Iwao Kobori,edt.: "Aral,Caspian and Dead Sea (編集中)" UNU Press, (1995)