研究課題/領域番号 |
05044025
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
下川 浩一 法政大学, 経営学部, 教授 (70061075)
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研究分担者 |
MCーDUFFY Pau ペンシルバニア大学, ウォートンスクール, 助教授
TIDD Joseph インペリアルカレッジマネージメントスクール, 講師
JURGENS Ulri ベルリン社会科学研究センター, 主任研究員
藤本 隆宏 東京大学, 経済学部, 助教授 (90229047)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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キーワード | 自動車 / 組立ライン / 自動化 / 生産システム / 熟練 / 柔軟性 / 設計開発 / 情報システム / Work Organization |
研究概要 |
1980年代末から90年代初めにかけて世界先進国における自動車産業を中心とする組立ラインの自動化は急速に進展したが、どちらかというとハード面の自動化に偏し、自動化システム支援のための情報システムにしてもそれがかならずしも有効に機能しないのが各国における共通の悩みであった。それに加えて組立自動化工場といってもその工場そのものの工程設計のやり方は決して一様ではなく、なかんずくハイボリュームマスプロ型の生産方式をとる工場と、よりフレキシブルで市場ニーズに迅速に応えられるリーン生産システムをとる工場においてとでは多くの対照がみられる。しかしながらリーン生産システムをとってきた日本においても工場ごとにその自動化のやり方とこれを使いこなす現場のソフトは違っている。しかも全般的な傾向として日本の場合でもバブル好況の中でハードの自動化投資は進み、当時の若年労働力不足をカバーすることになったが、自動化に伴う生産工程の異常事態への対応能力やTPMによる現場の予防保全能力までが自動化率の上昇とともにレベルが上がったかというとかならずしもそうではなかった。このようなことから最近ではハードの自動化や情報化に対する反省が始まり、現場における多能工的ないし知能工的熟練の見直しと再評価が進んでいる。 このような傾向とならんで自動車生産の減産やリストラが進み、設計開発段階にまでさか上った部品点数やプラットホームの削減や共通化が実施され、この面でも能力増強に直結したハードの自動化の見直しや設計段階からの作り易さや自動加工自動組付けのやり易さを追求する動きも強まっている。 以上のようなハード偏重の自動化に対する反省と現場の熟練やチームワーク重視の傾向は、日本だけでなくアメリカや欧州においても顕著に見られる。これら欧米の諸国では一方でリーン生産方式をとり入れ、よりフレキシブルな生産システムの導入を試行錯誤しつつも、他方ではGMのハムトラミック工場やFiatのカッシ-ノ工場のようにハード自動化を先行させ、熟練と人間労働の軽視を前提とした工程設計で工場をつくったために失敗した事例もある。にもかかわらず欧米諸国においてもハード一辺倒の自動化には反省がみられ、より人間の知能と熟練に依存した工場づくりを目指す働きも強まっている。 以上のような新しい傾向に着目しつつ我々研究グループでは、これまで行ってきたアンケート調査の補正を試みるとともに、新しい傾向を代表すると思われるいくつかの工場調査を試みた。例えばフランスのPSAとフィアット合弁のセ-ベルノリト工場、フィアットのメルフィ工場、GMのサターン、工場そしてトヨタケンタッキー工場とトヨタ九州宮田工場などの調査がそれである。そのほか10月にイタリアのベニス大学でVoipato教授等が組織した組立自動化システムの国際比較に関する国際会議にも藤木助教授が参加して発表を行い、このテーマについての幅広い意見交換を試みている。 またドイツにおける研究のパートナーであるユルゲンス教授とは連携を密にし、共同研究のすり合わせと意見交換を欧州と日本で行い、日本ではホンダの狭山工場における開発と生産立ち上がりのリ-ドタイム短縮の調査をも実施している。またアメリカのMC-Kuffy教授、イギリスのTidd教授とも意見とお互いの研究成果を交換している。 以上のような研究調査の国際交流を強化した中で、これまでの研究と調査を論文集として研究書にまとめ、ドイツのSpringen Verlagより下川、藤本、Jurgensの共編で『Transforming Auto Assembly International Experiences with Automation and Work Organization』として今年中に発刊の予定である。
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