研究分担者 |
BEECHEM J.M. バンダービルト大学, 医学部, 助教授
MARDH Sven リンシェピング大学, 生命科学部, 教授
嘉屋 俊二 北海道大学, 理学部, 講師 (90186023)
BEECHEM M.joseph Vanderbilt University, Associate Prefessor
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研究概要 |
1.Na^+,K^+-ATPaseをBIPMとFITCとで2重標識した標品を用いて、リン酸化反応中間体(EP)の形成と分解(モ-ルド研究室)及び蛍光強度変化(ビ-チャム研究室)を追跡した。BIPMらかFITCプローブへの蛍光エネルギー移動はNa^+結合酵素の状態を基準にとると,Na^+閉塞酵素で減少し,酢酸感受性リン酸化酵素(E_1P)で増加、K^+感受性リン酸化酵素(E_2P)で最大に達し、K^+結合酵素で減少、Na^+結合酵素基準値に戻ることが示された.本酵素標品を用い、ポリクロメーターによる各反応中間体と分解のプロセスの測定を行った。Na^+閉塞酵素にアセチルリン酸(Acp)を添加すると、BIPM蛍光励起によるBIPM蛍光の増加(5/s)とBIPMプローブからFITCプローブへのエネルギー移動によるFITC蛍光の増加(11/s)と減少(0.7/s)が観察された。FITCプローブの単独励起でも増加(5/s)と減少(0.05/s)が観察された。BIPM蛍光は増加と共にred shift、エネルギー移動に基づくFITC蛍光はわずかにblue shift、直接励起のFITC蛍光はred shiftした。両プローブ間距離をForsterの式を用いて計算した。その結果Cys-964に結合しているBIPMプローブからLys-510に結合しているFITCプローブ距離は役36Åと推定された。 2.H^+,K^+-ATPaseをK^+非存在下でBIPM修飾Mg^<2+>の存在下、ATPを添加するとBIPM蛍光の可逆的な減少が観察された。α鎖当たり0.85molのBIPMが導入された標品をTPCK trypsinで処理すると、BIPM蛍光はほぼ定量的に可溶化された。可溶画分を逆相HPLCを用い、蛍光強度変化がほぼ一定にもかかわらず、BIPM結合量の増加に伴って増加し全蛍光の50%を占めるピークを得た。このピークのアミノ酸配列はSer-Pro-Glu-X-Thr-His-Glu-Ser-Pro-Leu-Glu-Thr-Argであり、ブタ胃H^+,K^+-ATPaseの一次構造からXはCys-241と同定した。以上の結果その他からH^+,K^+-ATPaseのリン酸化に伴う蛍光減少はCys-241に結合したBIPMプローブによると結論した。 3.Na^+,K^+-ATPaseとH^+,K^+-ATPaseは共にK^+感受性リン酸化酵素(E_2P)の蓄積に伴って、Trp残基の蛍光を増加した。一方、H^+,K^+-ATPaseのCys-241のBIPM蛍光は減少、Na^+,K^+-ATPaseのCys-964のBIPM蛍光は増加する。TPCK trypsin処理によってCys-241に結合したBIPMプローブを含むtridecapeptideが容易に限定的に可溶化されたことは、Hydropathyplotその他から、細胞質側の可溶性部位にCys-241が存在するとした結果を支持する。Na^+,K^+-ATPaseのCys-964に結合したBIPMプローブの蛍光変化は酵素標品中のphospholipidsの分解で消失し、C_<12>E_8(octacethylene glycol n-dodecyl ether)で強い消光を受ける。蛍光エネルギー移動による距離の推定その他はBIPMプローブの位置は細胞質間から数Å内部に存在することを示唆している。 Na^+,K^+-ATPaseをphosphatase基質[^<32>P]Paranitrophenylphosphate(PNPP)Mg^<2+>とNa^+の存在下でリン酸化すると定常状態で[^<32>P]ATPでリン酸化されるほぼ倍量のEPが形成された。SDS処理で得られた高純度のNa^+,K^+-ATPase標品、又DOC-NaI処理標品を用いouabainの結合量、CDTA存在下でのATPの結合量及びATPからのEP形成量を比較した結果、その比は約1:0.75:0.5となり、E_1PのPNP感受性も考慮するとNa^+,K^+-ATPaseの膜中での機能単位は(αβ)_2よりさらに高度のオリゴマーである可能性が高い。
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