研究課題
国際学術研究
Lembang断層は、ジャワ島西部において地質学的また地形的に顕著な断層の一つであり、その西方への延長上に位置する地質断層であるCimanndiri断層とともに、この地域のテクトニクスを支配する重要な構造である。さらに、Tangkubanperahu火山などの火山活動や地熱活動も活発である。これらの地域における地殻変動と断層運動を研究するために、バンドン工科大学およびインドネシア国立測量地図局のGPS基準点を基準として反復精密測位を実施した。8-9月に2観測を行い、Bojonglopang、Sagaranten、Pelabuhanratu、Ciawi、LipiKiaradua、CisaatおよびLembangの精密測位を実施した。さらに10-11月には2観測を行なった。ここでは、1993年の測位に引き続く第2回目の観測であると同時に、両断層を跨いで広域に基線網をカバーすることを配慮して、観測プログラムを設定することとし、バンドン工科大学を基準点とし、Tugu、Leles、Ciawi、Ciatr、CibodasおよびNagregの相対測位を実施した。このほか、バンドン工科大学においては、10月25日から11月1日までGPS精密測位観測と平行して、気圧、気温および相対湿度の連続観測を行い、GPS衛星からのマイクロ波電波の伝播遅延誤差に関する研究のための基礎資料を収録した。GPS観測は、1セッションを6時間とし、このセッション中約1時間毎にそれぞれの地点では携帯型測器によって気圧、気温および相対湿度を測定した。GPS測位資料の解析結果は、Cimandiri断層の北側約50kmに位置する国立測量地図局を基準とした場合、Cimandiri-Lembang断層の北側に位置するPerabuhanratu、Sukabumiなどは20mm/y程度の東方変位を示すのに対し、同断層の南側のバンドン、Garut、Sagarantenなどでは10-20mm/yのほぼ北向きの変位を示している。このことは、インド・オーストラリア・プレートのジャワ島下への沈み込みに伴う歪が同地域において卓越していることを意味している。現段階ではまだ確定的ではないが、Cimandiri断層-Lembang断層周辺におけるずれ歪の量は周辺に較べて大きく、定常的なクリープ変位がなければ、この地域に応力の蓄積がなされていると推論できる。この結果は、地殻変動速度と断層変位、およびTangkubanperahu火山をはじめとする周辺の火山活動周期、並びにKamojang地熱地帯の活動などとの対比研究を進めるための基礎的な資料となる。地殻変動の観測と同時に、地殻構造を知ることは変動の原因の究明のみならずテクトニクスの研究に非常に重要である。このため、本年度はラコストG-876重力計1台を使用して、日本・インドネシア間重力測定およびインドネシア国内重力測定を実施した。国内測定のうち、ジャカルターバンドン間の測定は、旅程の都合上、往路と復路それぞれの片道観測を1本の往復測定とみなして処理を行なった。国内測定はバンドン市の地質博物館内にある重力基準点を基点としてデータ処理を行なった。1993年に、京都大学防災研究所所有のラコステG-605重力計と平行して実施した重力観測点のうち、本年度に測定を行なった7点、すなわち、Narita、Jakarta T1-A、Jakarta T2-E、Ciawi GPS、Bandung DGO、Tangu GBO6およびLembang GPSの各点についての93年の結果との差の2乗平均は、0.011mgalであった。これは、前回93年の測定および今回の測定が通常の精度をもって実施できたことを示すものであると考えられる。将来、重力計の目盛り検定が一層精密に行なわれるならば、本研究の結果は日本-インドネシアのより正確な結合を与えることになる。次に、93年度に観測されていなかったGPS観測点Sukanagaraにおいて観測を行なった。なお、これに際して、Cianjur、Cibeber、Campakaなどの6補点を新設した。以上、計14観測点の重力値をNarita GSIにおける重力値を基準として決定することができた。GPS観測が、主として水平位置の精密決定を行なうのに対して、重力測定の結果は、地殻変動の垂直成分の観測とその変動機構を解明するための基本資料となるものである。
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