研究課題
本年度は、米国および日本での当初計画に沿った実験研究により、次の主なる成果を得ることが出来た。1.低放射化オーステナイトFe-Cr-Mn系鋼を200℃、0.04dpaまで中性子照射後、機械的性質と合金組成の関係を調べ、Fe-10%Cr-(20-25)%Mn-3%AlおよびFe-10%Cr-30%Mn鋼が良好な性質を示し、また、Al添加により照射下における相安定性が向上することを明らかにした。2.Fe-Cr-Mn系改良AMCR合金鋼を高速中性子で420℃、520℃及び600℃で32-36dpaまで照射後、密度測定からスエリングを評価した結果、Fe-12%Cr-11%Mn-0.5%Si-1.4%Wに0.3%Cを添加した鋼が耐スエリング特性に優れていることを確認し、炭素添加がスエリング抑制および相安定に効果的であることを示唆した。3.Fe-Cr-Ni系モデル鋼について、照射下での粒界近傍での合金組成変化および粒界安定性を超高圧電子顕微鏡による電子線照射その場観察実験を行い、粒界におけるNiの顕著な偏析とCr濃度の低下を同定、同時に偏析挙動が顕著に現れる場合に粒界移動も著しいことを観察、この照射下粒界移動は照射点欠陥、特に格子間原子の粒界への流入に支配されることをはじめて明らかにした。4.結晶粒界での溶質原子の濃度変化の理論的予測のためのシミュレーション計算を多成分系合金を対象に行い、オーバサイズ原子は粒界で減少し、アンダーサイズ原子は濃化さらに、各合金濃度比によって偏析程度が変化する事を示した。5.低放射化材料として将来最も期待されている、バナジウム及びバナジウム合金の照射化の合金組成変化として、核変換(n.r)による組成変化が中性子照射により起こることを見い出し、特にバナジウムではCrおよびTiが生成することを照射純V試料のEDS分析からはじめて明らかにした。
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