研究分担者 |
CRUZ Ernest チリカトリカ大学, 工学部, 助教授
RIDDELL Rafa チリカトリカ大学, 工学部, 教授
松岡 昌志 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (80242311)
年縄 巧 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教授 (00188749)
翠川 三郎 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (00143652)
時松 孝次 東京工業大学, 工学部, 教授 (50134846)
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研究概要 |
1.チリ中央部の強震観測点の地盤調査 1985年チリ地震(M7.8)の際に良好な記録が得られたチリ中央部の強震観測点9地点において常時微動のアレイ測定を行った.アレイ測定から表面波の伝播速度を求め、これを満足するような地盤の速度構造を逆問題として解いた.その結果、各地点で深さ30m〜100mに至るS波速度構造が推定できた.また,強震アレイ観測が展開されているサンチアゴ市内での地盤性状を把握するために約30地点で常時微動測定を行った.その結果、常時微動の水平・上下スペクトル比で強震記録にみられる地盤特性をおおむね説明できること、常時微動の長周期領域でみられる卓越周期と基盤深度の間には強い相関がみられ堆積地盤のS波速度が600m/s程度と推定されること、などを確認した.これらの結果と既存の地盤調査とあわせて、チリ中央部の強震観測地点の地盤情報を充実させた. 2.強震記録のデータベース化 海溝型地震による強震記録を中心とした強震記録のデータベースを作成した.チリの強震記録については、1985年チリ地震(M7.8)の強震記録を中心として100成分強のデータを収集し、整理した.日本の強震記録については、1994年北海道東方沖地震(M8.1),1994年三陸はるか沖地震(M7.6),1995年兵庫県南部地震(M7.2)など最新の地震による強震記録を含む500成分を越えるデータを収集・整理した.これらにより,地震規模の大きな地震の記録や電源近傍での記録が充実した強震記録のデータベースが作成できた.同時に、わが国の強震観測点の地盤情報および上述のチリ中央部の強震観測点の地盤情報のデータベースも作成した. 3.海溝型巨大地震の強震記録の解析 作製したデータベースを利用して,地震動の基本的な特性値として,最大振幅,応答スペクトルなどを計算し,これらの特性と地盤条件、電源距離、電源メカニズムとの関係について検討した.その結果,(1)周期が長くなる程地盤条件の影響をより強く受け、地盤の平均S波速度で地盤の影響を簡便かつ定量的に評価できること,(2)電源深さが深くなる程,振幅が大きくなり、輝源での応力降下量が振幅に及ぼす影響が大きいこと、(3)海洋プレートでの地震の方が大陸プレートでの地震よりも振幅が大きくなり、テクトニックな環境が振幅に及ぼす影響が無視できないこと、(4)カルフォルニアの地震による結果は大陸プレートでの地震による結果とはほぼ一致するが、海洋プレートでの地震による結果とはあまりよく対応しないこと、(5)振幅のマグニチュード依存性は周期が長くなる程強いこと、(6)海洋プレートでの地震の場合には距離減衰が小さい場合があること、が指摘できた. 4.海溝型巨大地震の地震動の特性評価 上述の結果を踏まえて、海洋型巨大地震の地震動特性の内、最大加速度および最大速度の簡便な予測式を提案した.予測式では、地震規模、断層距離、震源深さ、地盤の平均S波速度をパラメータとした.得られた結果は、震源深さの影響が大きく、震源の深い地震については従来の距離減衰式では過小評価することがわかった.また,海溝型巨大地震を対象として入力地震動を設定する場合の注意点として、(1)カリフォルニアの地震による結果をそのまま用いると過小評価する恐れが強いこと、(2)長周期成分が卓越しやすく、その結果地盤の影響を強く受けやすくなり、地盤の評価がより重要になること、(3)震源が深い地震でも、大きな地震動を生ずる恐れがあり、無視できないこと、(4)距離減衰が小さいために距離が離れていても振幅がほとんど減衰しない場合があること、を指摘した.
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