研究課題
D-アミノ酸トランスアミナーゼはD-アミノ酸のみをアミノ基供与体とし、細菌のD-アミノ酸代謝の中心に位置するピリドキサル酵素である。本研究では、ユニークな本酵素の立体構造を解明するとともに、タンパク質工学的手法により各種の変異酵素を作製してそれぞれの立体構造や機能を調べ、タンパク質の立体構造保持、活性発現に寄与しているアミノ酸残基とその役割をあきらかにし、耐熱性酵素と非耐熱性酵素、並びにそれぞれの変異酵素の構造と安定性を比較することにより、耐熱性酵素におけるタンパク質構造の安定化機構を解明し、酵素利用の新しい可能性を探索することを目的としている。既に研究を進めている中等度好熱性細菌、Bacillus sp.YM-1由来のD-アミノ酸トランスアミナーゼをPEG4000溶液からハンギングドロップ法によって結晶化した。本結晶の結晶形は単斜晶形に属し、格子定数はa=58.5A、b=76.2A、C=73.3A、β=103.9、非対称単位中に2モノマーを含んでいた。結晶の塩化エチル水銀誘導体を重原子同型置換法および異常分散法により解析し、1.94Aの分解能で精密化した。本酵素の主鎖フォールディングはアスパラギン酸トランスアミナーゼや他のピリドキサル酵素のそれとは全く異なること、および本酵素のピリドキサルリン酸を結合するLys145の側鎖がピリドキサルリン酸のC4'位に対してre面側に位置することが明らかになった。これは、本酵素に結合しているピリドキサルリン酸の同位置のpro-Rプロトンが特異的に溶媒水素と交換する事実と一致する。本酵素のタンパク質工学的研究をさらに発展させることを目的として、本酵素を生産するユニークな好熱性細菌、特に海外のユニークな好熱性細菌や超高度好熱性細菌を調査し、耐熱性あるいは超耐熱性D-アミノ酸トランスアミナーゼ生産菌の探索を行った。
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