研究概要 |
1 摂食挙動における摂食装置と鞭毛根系微小管との関係について; (1) 長鞭毛打による水流によって飼粒子が細胞に引き寄せられ,鞭毛間に捕捉されると,摂食胞が鞭毛基部に形成される。その中に飼粒子は送り込まれ,摂食胞の開口部が閉じ,細胞内に取り込まれる。この過程は鞭毛根系No.3によって制御を受けている(Poterioochromonasなど)。 (2) 長鞭毛打による水流によって飼粒子が細胞に引き寄せられ,鞭毛基部に付着すると,それまで細胞長軸に沿って前方に伸びて運動していた鞭毛はただちに運動を中止し,約90度折れ曲がる。飼粒子は短鞭毛の直下から,直ちに細胞内の食胞に取り込まれる。摂食胞の分化はない。この系においては,鞭毛根系No.3を構成する6本の微小管のうち最外側のa,f小管の相互の間隔が変化することが示唆された(Anthophysa,Spumellaなど)。 (3) 長鞭毛打の水流によって鞭毛基部に引き寄せられた飼粒子は,鞭毛基部近くの細胞表層から短鞭毛の側部を通って細胞前半部に発達する杯状構造に捕えられる。その後,粒子は食胞に取り込まれる。杯状構造は常備構造体である。このタイプでは,鞭毛根系No.3のf小管は杯状構造の縁に沿って細胞質中をその全長にわって走行し,この構造の維持に貢献していると考えられる。 2 核分裂装置形成に働く構造体について; 現在まで調査された6種のハプト藻核分裂の極構造体は,ミトコンドリア,小胞体膜とゴルジ体である。しかし,いずれも紡錘体形成中心としての直接証拠は得られていなかった。本研究によって,ミトコンドリア表層に局在する電子密度の高いMTOCがPhaeocystisで初めて見い出された。これはミトコンドリアの原始的な機能についても重要な示唆を与えると思われる知見である。
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