研究課題
平成5年度はロシア極東地域でのマツ類さび病の発生状況を広く調査する予定であったが、ロシア側との交渉で、調査許可がとれなかったり、また費用などの点で当初予定したより調査地域が限定されてしまった。しかしながら、ロシア側の選定したマガダン、ハバロフスク、ウラジオストク周辺にある森林保護地域は、安全で調査が容易な場所であったため、大変良好な成果を上げることができた。マガダンでは、コンタクトおよびスノ-バレーのハイマツ地帯において調査を行ったが、発疹さび病と考えられるハイマツが多数認められ、これらの標本を採取した。また、発疹さび病菌の中間宿主と考えられるスグリ類にもさび病の発生が認められ、これらの標本も多数採取した。ハバロフスクではビチューハおよびボルシェシェフシルスキーの森林で調査を行ったが、チョウセンゴヨウおよびヨーロッパアカマツに発疹さび病の発生が認められ、標本を採取した。また、これらの中間宿主と考えられるスグリ類およびシオガマギク類にもさび病の発生が認められた。ウラジオストクでは、マイサ、カパニ-およびブラガダトネの森林保護地域で調査を行った結果、チョウセンゴヨウに発疹さび病の発生した痕跡が認められた。さらに、中間宿主と考えられるスグリ類およびシオガマギク類にはさび病の発生が広く認められ、多数の標本を採取した。以上のようにロシア極東地域ではマツ類上に広く発疹さび病の発生していることが明らかになった。また、中間宿主と考えられる植物上でも広くさび病の発生が認められたため、今後これらとマツ類発疹さび病との関係を明らかにする必要がある。なお、上記の調査で採取した標本は二分し、半分はロシアのウラジオストクにある生物地質研究所に残し、残りは日本の持ち帰り、現在、標本の形態学的観察を行い、分類学的検討中である。