糸状菌の第一次病原性決定因子:宿主特異的毒素の生合成,識別,及び解毒の分子機構

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05044133
• 研究機関: 鳥取大学
• 研究代表者: 甲元 啓介 鳥取大学, 農学部, 教授 (80032093)
• 研究分担者: TURGEON B.G. コーネル大学, 植物病理学科, 上級研究員 ; BRIGGS S.P. パイオニアハイブレツド社, 生物工学研究部, 上級研究員 ; WALTON J.D. ミシガン州立大学, DOE/MSU植物研究所, 準教授 ; AKIMITSU K. ミシガン州立大学, 植物病理学科, 研究員 ; BRONSON C.R. アイオワ州立大学, 植物病理学科, 助教授 ; YODER O.C. コーネル大学, 植物病理学科, 教授 ; 田平 弘基 鳥取県園芸試験場, 研究員 ; 児玉 基一朗 鳥取大学, 農学部, 助手 (00183343) ; 柘植 尚志 名古屋大学, 農学部, 助教授 (30192644) ; 小林 裕和 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教授 (80170348) ; 中島 広光 鳥取大学, 農学部, 助教授 (40144646) ; 尾谷 浩 鳥取大学, 農学部, 教授 (50032305)
• キーワード: 宿主特異的毒素 / 毒素生合成酵素 / 毒素レセプター / 毒素生合成遺伝子 / 抵抗性遺伝子 / 解毒酵素 / 遺伝子破壊

研究概要

平成2・3年度国際学術(共同)研究及び平成2〜4年度総合研究の研究成果を踏まえて、研究焦点の明確な日米共同研究を展開中である。平成5年9月には宿主特異的毒素に関する鳥取大学国際シンポジウムを開催し、宿主特異的毒素(HST)の生合成過程、レセプター解析を中心とした研究成果の発表、討論がなされた。本プロジェクト分担者のうちO.C.Yoder(コ-ネル大)は、病原性決定因子の例(メラニン、クチナーゼ、ピサチン分解酵素およびT-toxin)をあげ、各因子の同定・解析に酵素蛋白質の単離、遺伝子クローニング、遺伝子破壊などの技法が用いられ、それらの病理学的意義について決定的な評価を下した。尾谷(鳥取大)はAKおよびAL-toxinが宿主特異的な作用と同時に非特異的な作用も示すことを植物培養細胞を用いて明らかにした。秋光(ミシガン州立大)はvictorin結合レセプター蛋白質の存在様式とその役割を免疫学的手法によって明らかにした。G.Turgeon(コ-ネル大)は、ポリケタイド系HST、特にT-toxinの生合成遺伝子を例に分子遺伝学的解析結果について報告した。J.D.Walton(ミシガン州立大)は、環状ペプチドであるHC-toxin合成酵素HTSの純化とその生合成遺伝子HTS1のクローニングについて報告した。S.P.Briggs(パイオニア・ハイブリッド)はトウモロコシにおけるC.carbonumrace1抵抗性遺伝子であるHm1のトランスポゾン・タギングによるクローニングについて述べ、本遺伝子がHC-toxin reductaseをコードしていることを明らかにした。柘植(名古屋大)は、AK-toxin生合成遺伝子のクローニングと、ナシ黒斑病菌のRFLP分析による生態学的解析について報告した。甲元(鳥取大)は本シンポジウムの記録集を刊行した。

研究成果

• [文献書誌] 甲元啓介: "植物病原糸状菌による宿主識別-宿主特異的毒素の介在とその分子機構-" 学術月報. 46. 1035-1042 (1993)
• [文献書誌] B.G.Turgeon et al.: "Cloning and analysis of the mating type genes from Cochliobolus heterostrophus" Molecular and General Genetics. 238. 270-284 (1993)
• [文献書誌] S.K.Nutsugah et al.: "Ultrastractural changes in pigeon pea cells caused by a host-specific toxin from Alternaria tenuissima" Ann.Phytopath.Soc.Japan. 59. 407-415 (1993)
• [文献書誌] H.Otani et al.: "Alternaria toxins and their effects on host plants" Canadian Journal of Botany. 72(in press). (1994)
• [文献書誌] K.Kohmoto & O.C.Yoder(eds.): "Host-Specific Toxin:Biosyntesis,Receptor and Molecular Biology(Proceedings of the Second Tottori University International Symposium on Host-Specific Toxin,1993)" Tottori University, 313 (1994)
• [文献書誌] O.C.Yoder et al.: "Genetics of polyketide toxin biosynthesis by plant patho-genic fungi,In:Industrial Microorganisms:Basic and Applied Molecular Genetics,R.H.Baltz,G.D.et al.,eds." American Society for Microbiology,Washington DC, 217-225 (1993)
• [文献書誌] J.D.Walton et al.: "Cochliobolus,In:Pathogenesis and Host-Parasite Specificity in Plant Diseases,K.Kohmoto,R.P.Singh & U.S.Singh,eds." Pergamon Press,London(in press), (1994)
• [文献書誌] K.Kohmoto,H.Otani and T.Tsuge: "Alternaria alternata pathogens,In:Pathogenesis and Host-Parasite Specificity in Plant Diseases,K.Kohmoto,R.P.Singh & U.S.Singh,eds." Pergamon Press,London(in press), (1994)