研究概要 |
本研究でタバコモザイクウイルス(TMV)を材料にしてウイルスと植物の相互作用を原形質連絡との関連で解析を行った。細胞間移行する過程にはこのウイルスがコードする30kD蛋白質が機能している。1)まず、TMV-Ob株の解析が研究代表者のグループとRoger Beachy氏のグループでそれぞれに進められていたこともあって、平成5年度途中ですでにN遺伝子とTMV遺伝子産物との相互作用についての実験が完結され、更に共同実験によって次の段階の実験をするに至っている。TMV遺伝子産物のなかでN遺伝子産物と相互作用しているのは複製酵素である130kDa/180kDa蛋白質であった。次の段階として、130kDa/180kDa蛋白質中のN遺伝子の作用を乗り越えるためのアミノ酸変異が、本来の機能である複製に関する活性が変化していないか否かを考察した。アミノ酸変異が複製自体には差をもたらさないことが、野性型のOb株とOb株から単離されN遺伝子の作用を受けるようになってしまったOb-NL1,NL2,NL3株をプロトプラストに感染させる実験によって確認された。(2)TMVの宿主域を決定する因子が30kDa蛋白質であるという実験結果も研究代表者の最初の渡航中に明かとなった。日本でラッキョウで増殖するTMVが報告された。その情報も宿主域を決定する因子が30kDa蛋白質であることを裏付けしている。来年度でこのウイルスも取り上げる予定である。(3)移行タンパク質である30Kタンパク質が238番目のセリンで植物細胞内でリン酸化を受けていることを確認した。残りも30kD蛋白質のアミノ酸残基234から261番目までに存在するセリン残基である。(4)Tm-2^2遺伝子抵抗性を打ち破る2^2株の解析の結果、30kD蛋白質の中のアミノ酸の置換変異2個により、Tm-2^2トマトでも増殖可能となったことが明らかとなった。
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