研究課題/領域番号 |
05044140
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
渡辺 雄一郎 帝京大学, 理工学部, 助教授 (60183125)
|
研究分担者 |
BEACHY Roger スクリップス研究所, 植物生物学部, 部長
細川 大二郎 東京農工大学, 農学部, 教授 (50014957)
岡田 吉美 帝京大学, 理工学部, 教授 (30011703)
|
研究期間 (年度) |
1993 – 1995
|
キーワード | 植物ウイルス / 植物 / 原形質連絡 / 移行タンパク質 / リン酸化 / ウイルス抵抗性 |
研究概要 |
タバコモザイクウイルス-Lの移行タンパク質の解析から、238番目、37番目のセリン残基でリン酸化を受けている事実が明かとなった。このうち、前者のセリン残基をアラニン残基に置換してやってもウイルス(238A)の感染性にはさして影響はない。この置換は37番目のセリン残基のリン酸化には影響がないのか、移行タンパク質は相変わらず、リン酸化を受ける。なお、このセリン残基は種々のトバモウイルスでしられている移行タンパク質の中で、ほとんど保存されていない。37番目のセリン残基をアラニン残基に置換してやるとそのウイルス(37A)の感染性は失われる。この置換は238番目のセリン残基でのリン酸化に負の影響をあたえ、この変異体移行タンパク質はまったくリン酸化を受けなくなる。このセリン残基は種々のトバモウイルスで非常によく保存されている。 昨年来、この共同研究でその有用性が示されてきたグリーン蛍光蛋白質(GEP)を利用した新たな実験を展開した。共同研究者の研究質のHeinleinとPadgettはGFPをタバコモザイクウイルスの移行タンパク質のC端に融合させたウイルスを作成した。その融合蛋白質の発現によってウイルスは増殖すること、さらにはウイルスの伝播に伴ってGFPの目印で移行タンパク質の発現している細胞群が蛍光顕微鏡の下で観察された。プロトプラスト内での融合蛋白質が細胞内の微小管系の構造の上に存在することが確認された。植物組織上では、同心円上に融合蛋白質の発現が広がり、その環の部分の内外で丁度ウイルスの細胞間移行の段階の違いによる細胞内の所在の時間が追えるようになった。 先のリン酸化に関係した移行タンパク質変異体、37A、238Aそして野性型についてそれぞれGFPを移行タンパク質のC端に融合させたウイルスを作成した。それぞれ37A:GFP、238A:GFP、野性型:GFPと名付けた。238A:GFP、野性型:GFPのウイルスをプロトプラストに感染させ一晩後に蛍光顕微鏡下で観察をすると、ほとんど同様の細胞内を張り巡らされた微小管系の所在と、斑点状に散在する所在が共存する。37A:GFPウイルスで同様の観察をすると斑点状に散在する所在、しかもパッチ状に大きく見える。この観察結果は上記のウイルスの病原性の+-と対応しており、病原性発揮、機能発現と結び付けて興味深い。 37番目のセリン残基をアラニン残基に置換したウイルス(37A)は病原性がないが、このウイルスの接種した植物体を長期間おいておくと、復帰変異によると思われるウイルスが或る頻度で回収された。これらの復帰変異体を現在増殖させ、精製している。これら復帰変異体の移行タンパク質のリン酸化能がどうなっているかを検討し、さらにリン酸化と移行タンパク質の機能との関連を解析継続中である。 TMV-R(ラッキョウ系)は単子葉植物であるラッキョウから単離された。一方普通系のTMVは双子葉植物であるタバコを宿主とする。両者の宿主域ははっきりとしており、TMV-Rはタバコには感染出来ず、TMVはラッキョウを宿主とすることはできない。全塩基配列を明らかにすると両者間のidentityは95%もあり、ゲノム配列の5%の違いのどの部分が宿主をすみ分けするのに関わるかを検討した。GFPをコート蛋白質のかわりに発現するウイルスをまず構築し、種々の両者ゲノムのキメラウイルスを作成した。その結果、複製酵素である130kD部分が普通系のTMV由来であればタバコで病原性を持つが、ラッキョウではない。逆に130kD部分がTMV-R由来であればラッキョウで病原性を持つが、タバコではない。複製酵素の由来に依ってウイルスがどちらの宿主に適応するかを住み分けしていることが明かとなった。当初、普通系のTMVとTMV-Rの移行タンパク質を比較すると、そのC端に11個のアミノ酸の違いが見いだされ、これらが宿主決定因子と想像したがこの予想は外れた。
|