研究課題/領域番号 |
05044153
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堅田 利明 東京大学, 薬学部, 教授 (10088859)
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研究分担者 |
石川 義弘 米国コロンビア大学, 医学部・薬理学科, 助教授
倉智 嘉久 大阪大学, 医学部, 教授 (30142011)
星野 真一 東京大学, 薬学部, 助手 (40219168)
櫨木 修 東京大学, 薬学部, 助手 (80142751)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | GTP結合タンパク質 / 細胞膜受容体 / イオンチャネル / アデニル酸シクラーゼ / 情報伝達 / ADPリボシル化 |
研究概要 |
動物細胞の細胞膜表面上にはホルモン、神経伝達物質などの細胞外刺激物質(アゴニスト)と結合する種々の受容体が存在し、アゴニストのもたらす情報を認識受容して細胞内にそれらの情報を伝達している。受容体にアゴニストが結合すると、その情報の多くはαβγの3つのサブユニットからなり、そのαサブユニットにGTP(またはGDP)が結合する制御タンパク質(Gタンパク質)を介して、細胞膜の内側に向いて存在する膜結合性酵素やイオンチャネルなどの効果器系へと伝達されている。 この情報転換因子として機能するGタンパク質のαサブユニットは、コレラ毒素や百日咳毒素によりNAD^+を基質としてADPリボシル化されるとその機能が様々に修飾されるので、情報伝達機構を研究する上で有用なツールとして利用されている。本研究では、各種の精製Gタンパク質の再構成、及び百日咳毒素が触媒するGタンパク質のADPリボシル化によるG_iの機能阻害を利用して、Gタンパク質によるイオンチャネルとアデニル酸シクラーゼの制御機構を検討し以下の知見を得た。 1)Gタンパク質によるカリウムイオンチャネルの開口制御 モルモット摘出心房筋細胞において、ムスカリン性アセチルコリン受容体やアデノシン受容体へのアゴニストの結合によって開口するK^+チャネルは、細胞を予め百日咳毒素で処理しておくと消失することから、百日咳毒素感受性のGタンパク質(G_i)を介して発現するものと考えられた。Inside-outのパッチ法を用いてβγサブユニットを添加するとK^+チャネルの開口が観察されるが、この開口はGDPの結合したGタンパク質(G_t;トランスジューシン)のαサブユニットによって阻害された。さらにβγサブユニットによる開口特性は、GTP添加によってもたらされる特性と完全に一致した。これらの結果から、生理的なアゴニストによるK^+チャネルの開口は、受容体刺激によってGタンパク質(G_i)から解離したβγサブユニットの作用に起因することが明かにされた。 2)プロテインキナーゼCによるアデニル酸シクラーゼのリン酸化とGタンパク質による制御 ATPからcyclic AMPを産生する動物細胞のアデニル酸シクラーゼには種々のサブタイプが存在し、それらのほとんど全ては促進性Gタンパク質(G_S)のαサブユニットやフォルスコリンによって活性化される。しかし、他の抑制性Gタンパク質(G_<i1〜3>)のαサブユニットやβγサブユニットによっては、サブタイプ毎に異なる制御を受けることが知られている。また、cyclic AMPを介する情報伝達の経路はプロテインキナーゼCの作用で修飾される場合が多い。そこで先ずプロテインキナーゼCによるアデニル酸シクラーゼのリン酸化の効果を検討し、以下の知見を得た。タイプVのアデニル酸シクラーゼはプロテインキナーゼCζによって20倍以上に活性化されたが、この活性化の程度はフォルスコリンによるもの(5倍)以上であった。プロテインキナーゼCζによってリン酸化されたタイプVのアデニル酸シクラーゼはフォルスコリンによってさらに活性化され、基礎活性の100倍以上の値を示した。リン酸化によるアデニル酸シクラーゼの活性化の度合いは、プロテインキナーゼCのサブタイプによっても異なり、プロテインキナーゼCαとζとによって相加的に活性化された。 一方、好中球細胞のアデニル酸シクラーゼは、G_i-関連型の受容体刺激共存下に、G_S-関連型の受容体刺激による活性化が増強されるというユニークな特性を示した。この効果はG_iから解離したβγサブユニットがアデニル酸シクラーゼに直接作用した結果であると考えられた。また、好中球細胞のアデニル酸シクラーゼ活性はフォルスコリンによって逆に阻害されることが明らかにされた。
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