急性前骨髄球性白血病の分化誘導療法とその分子生物学的機構の解明

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05044157
• 研究機関: 浜松医科大学
• 研究代表者: 大野 竜三 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70093002)
• 研究分担者: CHUO Dong 上海第二医科大学, 医学部, 講師 ; CHEN SaiーJua 上海第二医科大学, 医学部, 講師 ; CHEN Zhu 上海第二医科大学, 医学部, 教授 ; WANG Zenーyi 上海第二医科大学, 医学部, 教授 ; 直江 知樹 名古屋大学, 医学部, 助教授 (50217634) ; 大西 一功 浜松医科大学, 医学部, 講師 (80252170)
• キーワード: 急性白血病 / 分化誘導療法 / 急性前骨髄球性白血病 / レチノイン酸 / 分子生物学 / all-trans retinoic acid / PML遺伝子 / RAR遺伝子

研究概要

日本側2名(大西,直江)が平成6年10月に上海第二医科大学を訪問し、共同研究者のWang教授、Chen教授らと、これまでの研究成果と今後の研究の方向について協議した。まず、急性前骨髄球性白血病(APL)におけるPML遺伝子切断部位と夜毎の関連に関して意見交換を行った。中国では5′側切断奨励では3′側切断奨励に比して、予後不良とのデータが出されたが、日本側はこれに否定的であった。この原因は治療法や統計的な解析方法の相違によるものであろうとの意見交換がなされた。
染色体切断点DNA配列については、中国は当初トポイソメラーゼII認識部位と染色体切断部位との相関を提唱していたが、日本におけるデータの蓄積の結果、相関の認められない症例の多いことが明らかとなり、今後下記に示すごとく別の角度から研究を続行することにした。
平成7年2月には中国側2名(Dong,Zhu)を日本に招聘し、レチノイン酸によるAPL細胞分化機構について情報並びに倦怠の交換を行った。その結果、平成6年に日本側が提供した抗PML抗体を用いて、日中双方で研究の進展があったことが確認された。中国ではAPL細胞株NB4を用いて、レチノイン酸添加による細胞増殖、マーカー、細胞周期を解析し、PMLキメラ蛋白の細胞内局在の変化が最も初期に認められる変化であることを明らかにした。日本では患者由来のAPL検体を用い、レチノイン酸添加時のin vitroでの分化を解析し、同じくPMLキメラ蛋白の細胞内局在の変化と分化誘導には明らかな相関があることを明らかにした。この研究はAPLの分子診断やレチノイン酸に対する感受性試験として、臨床的に応用可能であろうとの意見の一致をみた。来年度は、他臓器腫瘍に対する科学療法のあとに発生した二次性APLにおける染色体転座症例について、その発症メカニズムを探るため、検体の交換、染色体切断部位の情報交換を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] Ohno,R.: "G-CSF in the treatment of acute myeloid leukemia: is it safe?" Leukemia & Lymphoma. 11. 15-19 (1994)
• [文献書誌] Kunishima,S.,Ohno,R.et al.: "Activation and destruction of platelets in patients with rheumatic heart disease." European Heart Journal. 15. 335-338 (1994)
• [文献書誌] Nagura,E.,Ohno,R.,et al.: "Nation-wide randomized comparative study of doxorubicin,vincristine and prednisolone combination therapy with and without L-aspara-ginase for adult acute lymphoblastic leukemia." Cancer Chemotherapy Pharmacology. 33. 359-365 (1994)
• [文献書誌] Kuriyama,K.,Ohno,R.et al.: "Poor response to intensive chemotherapy in de novo acute myeloid leukaemia with trilineage mylodysplasia." British Journal of Haematology. 86. 767-773 (1994)
• [文献書誌] Ohno,R.,et al.: "A double-blind controlled study of granulocyte colony-stimulating factor started two days before induction chemotherapy in refractory acute myeloid leukemia." Blood. 83. 2086-2092 (1994)
• [文献書誌] Suzumiya,J.,Ohno,R.et al.: "Hypercalcaemia caused by all-trans retinoic acid treatment of acute promyelocytic leukaemia: case report." European Journal of Haematology. 53. 126-127 (1994)
• [文献書誌] Ohno,R.: "Differentiation therapy of myelodysplastic syndromes with retinoic acid." Leukemia & Lymphoma. 14. 401-409 (1994)
• [文献書誌] Kunishima,S.,Ohno,R.et al.: "Bernard-Soulier syndrome Kagoshima: Ser 444→ Stop mutation of glycoprotein(GP) Ibα resulting in circulating truncated GPIb α and surface expression of GPIb βand GPIX." Blood. 84. 3356-3362 (1994)
• [文献書誌] Kanamaru,A.,Ohno,R.et al.: "All-trans retinoic acid for the treatment of newly diagnosed acute promyelocytic leukemia." Blood. (in press). (1995)
• [文献書誌] 大野 竜三: "図解 血球-生理・病態・臨床 白血球 白血球の腫瘍性疾患(p100-124)" 野村武夫,古沢新平,長尾 大 編集 中外医学社, 155 (1994)
• [文献書誌] 大野 竜三: "図説臨床〔癌〕シリーズNo.17 白血病・リンパ腫 -新版- ATL,AIDS関連リンパ腫を含めて 第2章 骨髄性白血病〈治療〉(p32-40)" 杉村 隆 監修 末舛恵一,高山昭三,服部 信,正岡 徹 編集 メジカルビュー社, 274 (1994)
• [文献書誌] 清井 仁,大野 竜三: "図説臨床〔癌〕シリーズNo.17 白血病・リンパ腫 -新版- ATL,AIDS関連リンパ腫を含めて 第6章 治療研究の新しい展開(p262-267)" 杉村 隆 監修 末舛恵一,高山昭三,服部 信,正岡 徹 編集 メジカルビュー社, 274 (1994)
• [文献書誌] 大野 竜三: "血液学ハイライト 白血病の診断,治療 第2版" 高久史麿,三浦恭定,平井久丸 監修 中外医学社, 115 (1994)
• [文献書誌] 大野 竜三: "図説病態内科講座 血液 白血球系疾患 白血病総論(p130-135) 急性白血病(p136-147)" 高久史麿 監修 矢崎義雄,猿田亨男,金澤一郎,溝口秀昭 編集 メジカルビュー社, 389 (1994)
• [文献書誌] 大西 一功,大野 竜三: "Annual Review 血液 1995 III.8.新しい成人T細胞性白血病・リンパ腫の治療(p162-172)" 高久史麿,宮崎澄雄,斎藤秀彦,溝口秀昭 編集 中外医学社, 327 (1995)
• [文献書誌] 大野 竜三: "血液病学 第2版 IV.造血器悪性疾患 C.治療総論(p916-937)" 三輪史朗,青木延雄,柴田 昭 編集 文光堂, 1813 (1995)