研究課題
国際学術研究
遺伝的に動脈硬化を発症する家族性高コレステロール血症(FH)のモデル動物Watanabe Heritable Hyperlipidemic(WHHL)ウサギを用いて、明らかな動脈硬化病変が認められる以前の年齢から病変の進行した年齢までにつき、経時的にその初期病変の形成過程を単球接着分子VCAM-1、マクロファージ、Tリンパ細胞に対する特異的抗体を用いて検討を行った。実験に際しては、同一モデルウサギを用いるが、それぞれの時期に屠殺するため、観察部位を特定するため、第一肋間動脈分岐部をその部位と定め検討したところ、WHHLウサギ1ヶ月令では、分岐部に限りVCAM-1の発現が認められ、2ヶ月令では、その部位の大動脈合周にわたりVCAM-1の発現が認められた。すでにその部位において、単球の存在も単球に対する特異抗体、また組織標本から確認された。単球の集簇に遅れること3〜4週でTリンパ球の存在をも確かめられた。抗酸化作用を有するプロブコールは、1987年のPNASに発表したごとく、WHHLウサギの動脈硬化病変の進展を明らかに抑制した。そこで、その抑制機序として単球接着分子の発現が抑制された結果である可能性があり、現在検討中であるが、申請時には3年間の計画であったので、完了には至っていない。内皮細胞に高コレステロール血症ウサギにおいて、VCAM-1の発現が誘導される機序として、動脈硬化病変の生じやすい部位に酸化LDLの集簇が今回確認されたが、同じくリゾフォスファチジルコリン(Lyso-PC)の集簇が認められる。Lyso-PCは酸化LDLをin vitroで作製する際に多量に作られることもあり、我々は単球接着分子の内皮細胞へのLyso-PCの影響を検討した。確かにVCAM-1mRNA、VCAM-1蛋白そのものの発現が誘導された。さらに、単球の他の接着分子ICAM-1についても、mRNA、蛋白の発現誘導がみられ、ICAM-1に関してはPKCを介さず、cAMPにより抑制される。シグナル伝達系の関与が考えられ、今後これらの点につき、さらに細胞レベルでも、Chait、Gimbrone両博士と共同してつめていく予定である。
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