研究概要 |
発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria,PNH)は,造血幹細胞に起こった体細胞突然変異によりGPIアンカーの生合成が不全になり発症する。私たちは,GPIアンカーの生合成系遺伝子のひとつをはじめてクローニングし,PIG-Aと名ずけた。2例のPNH症例においてPIG-Aが病因遺伝子である事をまず証明した。GPIアンカーの生合成は複数の遺伝子が関係しているので,症例ごとに病因遺伝子が異なるのか均一であるのかが問題となった。17例の日本人PNH症例を解析し,すべてがPIG-Aの異常を持つ事を示し,病因遺伝子は均一である事を証明した。米国の症例では,PIG-Aと異なるステップに異常があるかも知れないと示唆されていたが,私たちの結果に基づき再検討され,米国の症例においてもPIG-Aが病因遺伝子である事が証明されつつある。また英国の4例を解析し,4例ともPIG-Aが病因遺伝子である事を示した。これらの結果は,地域にかかわらず,PIG-Aがほぼ全PNH症例の病因遺伝子である事を示している。 私たちは,PIG-AがX染色体上に存在する事を見い出し,そのためひとつの体細胞突然変異だけでGPIアンカーの欠損をきたす事が考えられた。 他の遺伝子が常染色体上にあれば2つの突然変異が起こらないとGPIアンカーが欠損しないので,PIG-Aが原因になる確率にくらべ非常に低い確率になると考えられる。
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