研究課題/領域番号 |
05044169
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 亀代次 大阪大学, 細胞生体工学センター, 教授 (80144450)
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研究分担者 |
HOEIJMAKERS ジェイ.エイチ.ジ エラスムス大学, 医学部, 教授
HOEIJMAKERS Jan h.j. Faculty of Medicine, Erasmus University
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | DNA修復 / 色素性乾皮症 / DNA結合蛋白質 / Zn フィンガー / 蛋白質間相互作用 / 遺伝子ターゲッティング / 発がん |
研究概要 |
研究代表者の田中亀代次、研究協力者の中津可道、西條将文は、それぞれオランダのロッテルダム市にあるエラスムス大学医学部にJan H.J.Hoeijmakersを訪れ、in vitro系でのDNA修復蛋白質の機能解析および遺伝子ターゲティング法により樹立されたDNA修復遺伝子欠損マウスに関して互いの研究データや研究材料、研究技術の交換を行なった。また、成果を取り纒めるにあたり、本研究に関連した研究を独自に進めている他の研究者との情報交換あるいは解析技術を取得するため、オランダのエラスムス大学以外に、中津はイタリアのパビア大学を、西條はイギリスの王立癌研究所を、田中と西條はアメリカ合衆国のロスアラモス国立研究所を訪問した。 1.DNA除去修復遺伝子の機能の解析:田中は、XPA蛋白質が紫外線や化学発癌剤によって障害を受けたDNAに特異的に結合する事を明かにし、XPA蛋白質がDNA除去修復過程において障害部位の認識機構に関わる蛋白質である事を示唆した。ついで、プロテアーゼによるXPA蛋白質の部分分解法により、その障害DNA結合ドメインを同定し、Znフィンガードメインを含む122個のアミノ酸からなる蛋白質部分だけでXPA蛋白質の障害DNA結合能が保持されている事を明かにした。この結果は、種間でよく保存されているN末端のEクラスター領域やC末端部分はDNA結合には不要であり、別の機能を担っている事を示唆した。我々は、それらが蛋白質間相互作用に関わるドメインではないかと推測した。そこで、酵母におけるtwo hybrid systemを用いてXPA蛋白質と結合する蛋白質を検索した。その結果、既知の蛋白質としてERCC1およびRPA(replication protein A)が同定された。そこで、Hoeijmakersから入手したERCC1 cDNAを大腸菌内で発現させ組換えERCC1蛋白を精製し、さらにHoeijmakersから分与された抗ERCC1蛋白質抗体を用いて、ERCC1蛋白質はGST-XPAビーズに結合するが、GSTビーズには結合しない事を確認した。一方、正常細胞抽出液を抗XPA蛋白質抗体で免疫沈降すると、RPAがXPA蛋白質と共に共沈する事が明かになり、細胞内でもXPA蛋白質とRPAが結合している事が示唆された。さらに、田中は、ERCC1蛋白質はそれ自身では障害二本鎖DNAには結合しないが、XPA蛋白質と混ぜる事によりXPA蛋白質の障害DNAへの結合能が著明に増加する事を見いだした。Hoeijmakersらのデータより、ERCC1蛋白質はXPF蛋白質やERCC11蛋白質と結合し、障害DNA部位の3′側でDNAに切れ目を入れるエンドヌクレアーゼ活性を担っていると考えられている。XPA蛋白質はERCC1蛋白質と結合する事により、これらのエンドヌクレアーゼを障害部位に誘導する役割を担っているのではないかと考えられるが、われわれの結果は、XPA蛋白質とERCC1蛋白質の結合が効率よく障害部位を認識する上でも重要な役割を担っている事を示唆している。 2.DNA修復遺伝子欠損マウスの樹立と解析:田中はXPA欠損マウスを樹立し、HoeijmakersはERCC1欠損マウスを樹立した。XPA欠損マウスは正常に発育するが、ERCC1欠損マウスは生後一か月以内に死亡した。いずれのマウスもDNA除去修復能は欠失していた。XPA遺伝子はDNA除去修復過程のみに働いているのに対し、ERCC1遺伝子は発育に必須の他の生命機構にも関与している事を示唆する。XPA欠損マウスは低線量の紫外線や化学発癌剤DMBAの処理により高頻度に皮膚パピローマや有棘細胞癌を発生し、XP患者の高発癌性を解析する上でよいモデルになる事が示唆された。
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