研究概要 |
HLA多重遺伝子族による免疫応答の制御の分子機構を解明するために,HLA分子,抗原ペプチド,T細胞受容体の相互作用を分子レベルで解析した。(1)12型溶連菌M蛋白およびHBs抗原に対するT細胞株を樹立し,これらの拘束分子およびエピトープを解析した。HLA-DR2-DR51-DQ6-DP9陽性あるいは,HLA-DR4-DR53-DQ4-DP5陽性の健常人より樹立したM12特異的T細胞株は,主にDR4,DQ6,DP9分子より抗原提示を受けていた。DR4とDQ6に拘束されたT細胞株は共に1種のペプチドに反応し,このペプチドとDR4,DQ6分子との結合性が証明された。DP-9拘束性T細胞株は,6種のペプチドに反応しこれらのペプチドとHLA分子との結合性も証明された。DP9の結合モチーフは,DR分子の結合モチーフと異なることが示され,これがDR4,DQ6とDP9に拘束されたT細胞が異なるペプチドと反応した分子機構と考えられた。また,HBs抗原特異的T細胞株に関して,2つのエピトープを同定し,これらのペプチドとHLA分子の結合性を検討中である。(2)HLA-ペプチド相互作用を直接検討するために,HLA分子より溶出したペプチドの解析を行い,HLA-B52に特異的に結合していたペプチド5種の構造を同定した。これらのペプチドに共通なアミノ酸は,N末端から2番目がグルタミン,C末端が疎水性アミノ酸でありこれがHLA-B52の結合モチーフと考えられた。(3)HLA-A遺伝子座のDNAタイピングを確立し,HLA-A座の新しい対立遺伝子を5種類同定した。(4)HLA-DR51トランスジェニックマウスは,HA(307-319)ペプチドに対するT細胞応答性を獲得したことが証明された。種を越えて発現したDR51分子が機能することが証明されたことで,トランスジェニックマウスがHLAによる免疫応答ならびに疾患感受性の制御機構を解明するよいモデルとなることが示された。
|