研究課題
エリスロポエチン受容体の活性化機構を解明する目的でチロシンキナーゼ型受容体の細胞外ドメインとEPO受容体細胞内ドメインのキメラ分子を作成しその機能を解析した。その結果エリスロポエチン受容体はリガンドに依存した2量体化によって活性化され、その細胞内ドメインに増殖促進能、赤芽球系の分化誘導能およびチロシンりん酸化のシグナルを発生するのに必要十分な機能がそなわっていることを明らかにした。また欠失変異を導入し分化や増殖のシグナルに必須の領域はエリスロポエチン受容体細胞内ドメインの膜に近い約120アミノ酸の範囲にあることを明らかにした。また受容体のカルボキシ末端は増殖、分化のシグナル発生を減弱させる作用があることを明らかにし、フィンランドのグループによりヒト遺伝性赤血球増多症と深い関連があることが明らかにされた。今後これらのシグナルの実体を解明する必要がある。以上の研究からエリスロポエチン受容体の第二サブユニットはシグナル発生に必須ではないことが明らかとなった。そこで当初予定していた第二サブユニットのクローニングは必要でなくなった。次に受容体からのシグナルの最終標的を明らかにするためにサブトラクション法によってエリスロポエチンをはじめ各種サイトカインによって共通に活性化される遺伝子を数個クローニングした。これら活性化遺伝子は全く新規のものであり今後これらの遺伝子自身の機能と転写調節の機構を解明する予定である。これによって受容体から遺伝子に至る情報の流れが明確になると思われる。なお当初予定していたTGF-β受容体の解析は時間的な制約もあり思うような成果をあげられなかった。
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